雑貨のデザインで、ゆるーくどこか味わい深い絵柄を見かけたことはないだろうか。消しゴムを彫って作ったはんこでできたものだと聞くと「へぇー」と感心して、「私にもできるかな」と興味が湧いてくる。
取材班の中でも工作好きな記者が、消しゴムはんこ作りに挑戦してみた。
県内で消しゴムはんこといえば「週刊レキオ」で連載中のたまきすずこさんの似顔絵はんこだ。細やかな表情、しっかりとした輪郭からは、消しゴムを彫って作ったとは思えないプロの技が光っている。たまきさんに“一日弟子入り”した。
それも「味」なんです
記者が似顔絵に選んだのは、来年の引退を表明し、県民栄誉賞の授与が検討されている安室奈美恵さん。
たぶちゃん記者が描いた劇画タッチの安室ちゃんの似顔絵を手にたまきさんの事務所を訪ねた。
「安室ちゃん…ですか」。最初から似顔絵に挑戦しようとした記者に驚いたたまきさんは「まずはこれから」と、3センチ角の家の形をした図案を用意してくれた。
図案をトレーシングペーパーに写して、消しゴムに転写。図柄に合わせてカッターナイフで切れ込みを入れる。
「真っすぐ切れない…」。たまきさんは苦戦する2人を「それが味があっていいんです」と励ましてくれた。「ひゃっ」。危なっかしいカッター使いのたぶちゃん記者に、たまきさんは時折悲鳴を上げた。
それを横目に取材のメモを取りながらすいすいと仕上げた、れいちゃん記者。たまきさんから「すごく上手です!」と太鼓判をもらった。
はんこを押すと味わい深い模様が写り、2人は「わー楽しい!」とはしゃいだ。
「まあ、いいか」精神
たまきさんが似顔絵はんこを始めたのは10年前。本屋さんのコーナーで似顔絵はんこの作り方の本を見つけたことがきっかけだ。もともと似顔絵と版画が得意だったこともあり、自己流で始めた。
グラフィックデザイナーの傍ら、以前は似顔絵はんこの注文も受け付けていたが、現在は本業とレキオの連載に専念している。
一つの似顔絵作品にはだいたい2~3時間、細かいものは1日かかると言う。
「似顔絵は彫るバランスが崩れると全然似なくなるんです」とたまきさん。出来上がってはんこを押してみて予想と違うことも。「まあいいか、と。それも魅力の一つです」
私だけの安室ちゃん
さて、練習を終えて安室ちゃんはんこに取りかかった3人。「まゆげが太くなる…」。悩みながら黙々と彫る2人よりはるかに早くたまきさんの安室ちゃんが完成した。
3人ではんこの安室ちゃんとご対面。同じ図案なのに全然違う…! 「その人の彫り方で表情が変わるんです」とたまきさん。
世界で一つしかない安室ちゃんはんこが誕生した。
3人で「安室奈美恵」を彫ってみた。
たまき流 消しゴムはんこの世界
たまき・すずこ
グラフィックデザイナー。1977年8月生まれ、那覇市出身。
約10年前から消しゴムはんこ作家として活動を開始。「微妙に似てる似顔絵はんこ」が得意。
現在、週刊レキオの「似顔絵消しゴムはんこ うちなあ顔役」(毎月第3週掲載)を担当している。
いろいろなものではんこを作ってみた。
れいちゃん記者
芋はんこ
まずは焼いても蒸してもおいしい芋。
輪切りにし、サインペンで断面にイラストを描く。消しゴムに比べて柔らかく、力の加減が難しい。
力に任せると余計な部分まで彫ってしまうのでご注意。残念なことに数日たつとしなびてしまうのが弱点だ。
コルクはんこ
次にワインボトルなどのコルク栓。
断面が小さく固いので慎重に刃を進めるのがポイントだ。
刃を深く入れると削り取りやすいが、刃が滑って手を切る恐れがある。
曲線を彫るのが難しいので、モチーフは直線の図形や漢字がおすすめだ。
オリジナルグッズを作ってみた。
たぶちゃん記者
手作りのめがねはんこをザラ紙に押してちょっとおしゃれ
インコはんこを押してオリジナルのかごを作った。
たまきさんの作品
(2017年10月8日 琉球新報掲載)