SNSで広がる#MeTooムーブメント 告発者バッシングに転化させないために考えたいこと モバプリの知っ得![37]


SNSで広がる#MeTooムーブメント 告発者バッシングに転化させないために考えたいこと モバプリの知っ得![37]
この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

「深く傷ついたのに、人には言えない…」

セクハラやパワハラなどの被害を受けた方が勇気を出して告発する「#MeToo(私も被害にあった)」というムーブメントが世界中で広がっています。

発端は今年の10月。
アメリカ・ハリウッドの大物映画プロデューサーがホテルの部屋に若手女優を呼び出し、性行為を強要していたとの報道でした。
映画業界で地位の高いプロデューサーなだけに、被害にあった女性たちは泣き寝入りをしていました。また周囲の人たちも、知っていたけど見て見ぬ振りをしていました。

ハリウッドで長年黙殺されていたセクハラ・パワハラがニューヨークタイムズなどの報道で明るみになり、批判が集まります。
そして、同じようにプロデューサーから被害を受けていた女性たちが勇気を出して告発に踏み切ったのです。

セクハラ・パワハラの告発は、アメリカの映画業界で雪崩を打ったように広がり著名な映画監督・俳優が休業に追い込まれ、映画作品の製作中止・主編変更など大きな波紋を呼んでいます。

男性が被害に遭った事例もあるため「被害者=女性」ではないことも補足しておきます。

セクハラ・パワハラは勇気を出して告発しても、「何かしらの見返りを期待していたんでしょ」「お前が○○したのも(しなかったのも)原因だよ」と心ない言葉をかけられることがあるため、告発しにくくなっています。
こうした閉塞感を、同じワードを使って連帯感を生み出し、SNSで告発するのが「#MeToo」のムーブメントです。

日本でも広がりつつあるが…

この#MeTooは現在、日本でも広がりつつあります。
12月に入り、作家の「はあちゅう」さんが、前職時代の先輩から、セクハラ・パワハラの被害を受けたと告発したのです。このケースでは被害者・加害者双方が有名だったために、ニュースとして瞬く間に広がり、大きな話題となりました。

はあちゅうさんに続き、多くの人が「#MeToo」と投稿に添え、過去の被害を告発しています。

セクハラ・パワハラを告発する「#MeToo」そのものは、ネット上でも多くの人が共感し、指示を表明しています。

しかしながら、火付け役となったはあちゅうさんに関しては「過去にお前もセクハラ発言をしただろ!」と、逆に批難が集中しました。
あまりにも批難が集中したため、はあちゅさんは一度謝罪をしますが、その謝り方についいても批難が集まります。その後、根負けしたはあちゅうさんは謝罪を削除します。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

直接的なセクハラ・パワハラ被害者で精神的にも滅入っているであろうはあちゅうさんの過去の言動を引っ張りだし「みんなが納得する完璧な謝罪」を求める考えが私には理解できません。
少なくともこのタイミングで過去の言動を批難すると「私が言い出しても、過去の色んなことを取り上げられて責められるのではないか…」と告発そのものを躊躇する人も出てくるでしょう。

#MeTooは告発しにくいセクハラ・パワハラの閉塞感を打ち破る、ある意味で社会を変えるチャンスでもあるわけです。
しかし、告発者パッシングを行うことで閉塞感が戻るどころか「告発すると、やっぱり叩かれるんだ…」とさらなる萎縮を生む可能性も秘めています。

また、はあちゅうさんの謝罪、その後の削除をめぐる一連のやりとりで「擁護していたけど、もうやめるわ」との意見も多く見受けられました。
はあちゅうさんが受けたセクハラ・パワハラの被害と、はあちゅうさんの「セクハラ表現」は独立した事象です。後者の対応によって、前者の対応が変わるのであれば、「その人を支持できるかどうかでセクハラ・パワハラへの怒りが決まる」と宣言しているようなものです。
こうした心象判断も、「品行方正な告発者じゃないと認めない」と議論が振り出しに戻る形になるので、気をつける必要があります。

いずれにしても、セクハラ・パワハラは当人が無自覚的に行なっている場合も多く、気をぬくとすぐに「被害者」「加害者」になりえます。
今回の件も、告発者であるはあちゅうさんの個人的な問題にするのではなく、自分ごととしてしっかりと考え、被害者を増やさないためにやれることを丁寧に考えることが大事です。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」12月24日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/