台湾地震で発生した「デマ」と繰り返される「外国人差別」 モバプリの知っ得![42]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

2月7日、台湾で震度7クラスの地震が発生し、死者16人、負傷者285人を超す大災害となりました。

この地震をうけ、日本でも募金などの支援の呼びかけが広がりました。
多くの人が善意で動く一方、「ここに募金するとお金が中抜きされて北朝鮮へ送られます」などのデマも拡散しています。

災害時は緊急度が高まり、冷静さを欠いた結果、さまざまなデマが広がります。
古くは100年前の関東大震災、そして95年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震…大きな災害の度に、同じようなデマが繰り返し広がるのです。

デマは被災地や支援活動を混乱させる上に「命の危機」につながることもあります。

関東大震災の時には「朝鮮人が井戸に毒を入れている」と言ったデマが広がり、自警団によって朝鮮人の人たちが虐殺される事件も起きています。

100年前の出来事ではありますが、歴史から学ばなければ、私たちは同じ過ちを繰り返してしまいます。現に「外国人が井戸に毒を入れている」といったレベルのデマが広がっているのが現状です。

改めて、災害時のデマについての気をつけるポイントを確認したいと思います。

すぐに拡散された「募金」デマ

今回問題となった投稿は、2月7日の地震直後にTwitterで拡散されました。(現在は削除されています)

台湾の地震で募金する時の注意事項ね

ドラえもん募金(朝日系列。一部しか届かず残りは朝鮮へ)
サザエさん募金(フジ系列。同じく。)
日本ユニセフ(一番ダメ。アグネスチャンやスタッフの収益に大半が消費される。)
ピースウインズ(北朝鮮系。言わずもがな。)

募金する際は直接日本赤十字へ!

この投稿は短時間で、6万回以上リツィート(転送)され、投稿を見た人は数十万〜数百万になると思われます。

この投稿を見ると「募金団体は人の善意で集めたお金で私腹を肥やしている、悪いやつらだ」と印象を受けるかもしれません。

しかしながら、団体側は受け取ったお金の「一部を」適切な活動費として「きちんと公開し」、募金活動が広がるように活動しています。また、親善大使も(今回はアグネス・チャンさんの名前が出ています)無償で活動しています。

つまり、受け取ったお金を不当に外国に流したり、浪費しているような印象を持つような上記の投稿はデマであり、名誉毀損(になる可能性が高い)、非常に不適切な内容ということです。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

実際、大きい災害の後に路上で募金を装った詐欺が発生することもあります。
上記の投稿をリツィートした人も善意で転送したでしょうし、「嘘かもしれないけど、用心するに越したことはないから…」と深く考えていなかったかもしれません。

こうした投稿が広がることで、募金に対するイメージが悪くなり、団体も「デマの訂正」に労力を取られることになります。また、無償で親善大使になってい著名人の方が敬遠し、PR活動がうまく広がらないことも考えられます。

団体・親善大使の名誉が不当に傷つけられることに加え、募金活動の足を引っ張り、ひいては被災地復興を妨げる恐れがあります。

本当に復興、支援を考えているのであれば…情報をしっかりと精査し、デマを広げないようにしっかりと注意する必要があります。

繰り返される「外国人差別」

今回のデマでは「朝鮮」「北朝鮮系」の言葉、そして「香港出身」のアグネス・チャンさんの名前が挙げられ、広がりました。

デマを拡散した人の中には、こうした外国・外国籍の方を攻撃し、非難する言葉を添えた方もいました。

今回の件は、純粋な「デマ」が広がったわけでなく、そこに「外国・外国人差別」という、別の問題が乗っかっていることに注意をする必要があります。

100年前ですが、関東大震災の時には「朝鮮人が井戸に毒を入れていた」として、多くの方が自警団によって殺害される事件が発生しています。その時は、沖縄出身の方も「正しい日本語の発音ができないから朝鮮人だ!」ということで殺害されています。

その後の阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などでも毎回「混乱に乗じて外国人が女性を強姦している」とした話が流布しています。

これは「強姦が絶対にない」という証明が不可能なため、きっぱりと「デマです」と言い切れない難しさがあります。しかしながら強姦が増えたデータもないため、積極的に広める話ではないと考えます。
どうしても注意を促すのであれば、「女性の皆様は気をつけてください」程度にとどめ、「外国人」の言葉を外す必要があります。

災害時ではありませんが、沖縄でも昨年「中国から来た怪しい犯罪です」として「気絶させて臓器を抜き取られる」と言ったデマが広がりました。
 

「路上で乾燥海産物を〜」 広がるデマ、広げてはいけない理由

 

こうした一つ一つの噂・デマを否定しても、「火のない所に煙は立たぬ」とばかりに、差別を助長する人がいます。

災害が発生すると、日本にいる外国人の方も被災者になり、苦しく、辛い思いをします。

普段から、言葉や文化の違いで、窮屈な思いもしているかもしれません。
そうした中で「あいつらは犯罪を犯す」「許せないな!」とした身の危険を感じるデマが広がることの怖さはどれほどのものでしょうか。

確かに、北朝鮮を国家として考えると、拉致問題から始まり、ミサイルの問題など、日本との関係は良好とはいえない状況です。
中国や韓国も領土問題や歴史の問題で対立している部分もあります。

難しい問題が山積みだからこそ、デマや噂、悪い印象に惑わされず、冷静に議論する必要があるのです。

ましてや、国家ではなく「個人」を攻撃し、身の危険にさらすことがどれだけの価値があり、何を解決するのでしょうか。

「軽い気持ち」で「用心するに越したことはない」として、この手のデマを拡散する人たちは、今一度その影響を自覚する必要があるでしょう。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」2月18日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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