私だけの器探す旅に出た カメラとお出かけ ほろほろ街(マーチ)vol.17 壺屋やちむん通り(那覇市)

  • 南部
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「かわいいマカイがほしい」。りさ記者がぼそっとつぶやいた。「じゃあ、壺屋のやちむん通りに行きましょう!」と、ことの記者。そこにシーサーが欲しいわかな記者も加わった。

赤瓦屋根の店舗が軒を連ね、石畳が続く風情がある“やちむんの街”をほろほろしてきた。

 



獅子のり神と破壊ネ

 


まずは、やちむん通りの入り口にある那覇市立壺屋焼物博物館 1 を訪れた。沖縄の焼き物の歴史や、戦前・戦後の壺屋の暮らしを学ぶ。「シーサーって古代オリエントのライオンなんだ!」「薬を塗ってつるつるなのを上焼(ジョーヤチ)、ざらざらなのを荒焼(アラヤチ)って言うんだね」。焼き物の知識に触れ、通りを歩くのが楽しみになった。博物館を出ると、琉球石灰岩が敷き詰められた通りをてくてく歩いた。


ゆったりとした空気が流れるやちむん通り。人々は通りを行ったり来たり、お気に入りの器を探す。

島袋陶器所の陶工・島袋常栄さん。窯元には本人と同じ顔をしたシーサーがいっぱい。

通りから1本入った路地に窯元「島袋陶器所」 2 を見つけた。高さ1メートル近いシーサーと作り手の島袋常栄さん(75)が工場の入り口で迎えてくれた。

島袋さんはシーサー作りの名工。高さ80センチ以上の大型を手びねりで制作できる陶工は少なく、県内企業やホテルから発注が相次いでいるという。工場には、島袋さんが手びねりで作った大型のシーサーが何対も鎮座していた。

「赤土の方が粘り気とコシがあって作りやすいんだが、最近は白土のシーサーの注文が多いね」と島袋さんは話す。シーサーにもトレンドがあるんだ。清潔さのイメージ?白いと神々しく見えるから?そう聞くと「さあ、なんでかねぇ」という回答だった。

シーサーの顔はどれも島袋さんに似ている。「よく言われるよ。人間味あふれる表情のものを作りたいと思ってるから似てくるのかな」。三女渡辺育美(なるみ)さん(38)も「箸置きや小さな置物も父のシーサーの顔に似せて作っている」と話す。

よく見ると、作品を収めた棚にネットが張られている。「飼い猫が作品を壊すので防止のため」と育美さん。直後に黒猫の「破壊神」ミャーが現れた。

壺屋には猫好きが多いという。猫と伝統が生きる通り。思わず頰が緩んだ。



ぜいたな時を味わ

 


通りを少し戻り、見つけたクラフトハウススプラウト 3 。やちむん以外にも紅型雑貨や琉球ガラス、琉球藍染めの衣料品などがそろう。 目移りしていると、店主の宜保清美さん(56)が「点打ちや唐草の文様の陶器が人気」と教えてくれた。そっとカップを両手で包むと、ほっこりとしたぬくもりを感じる。

若者もやちむん通りを楽しめるように「時代が求めるものを反映させながら、伝統を踏まえて作られた品を置きたい」と宜保さん。日常に癒やしをくれる作り手に会ってみたくなった。

ほろほろしていたらお腹が空いてきた。通りを少し離れたところにある多国籍料理店Soi 4 にお邪魔した。店内に漂う香辛料の香りがさらに食欲をそそる。「旅行が趣味」だというオーナー夫婦。アジア雑貨などが所狭しと飾られている。外国に足を踏み入れたような不思議な感覚に浸りながら、記者たちはトムヤンクンにイエローカレー、ガパオライスにマーボー豆腐をぺろりとたいらげた。

30度超えの暑さにふうふう言いながら通りを戻る。目指すは赤瓦屋根のショップ「Kamany」 5 。窯元育陶園の陶工の作った器が並ぶ。どれも壺屋焼の伝統技法を生かしつつどこか現代的だ。ひときわ目を引いたのが、直線柄が特徴的なカップとソーサー。オリジナルブランドKANNAI(カンナイ)、BASANAI(バサナイ)シリーズだ。

「雷とバナナの葉をモチーフにしているんですよ。外部のデザイナーと若手の陶工も一緒に、幾何学文様を掘り下げようと試行錯誤しました」と育陶園のマネジメントを務める高安賢人さん(32)が話す。 ゆったりとした“時を味わう”をコンセプトに生み出された器たち。眺めるだけで、3人はぜいたくな気持ちになった。


「おおらかさを感じる器が好きなの」と語るスプラウトの宜保清美さん。

多国籍料理店「Soi」のやちむんの器に盛られた料理。

お客さんに、器の魅力を紹介する育陶園のマネジメントを務める高安賢人さん。



職人心意

 


店構えも味がある、小橋川製陶所(仁王窯)。

夕暮れ時、地元の人たちから「仁王さん」と呼ばれ、親しまれている小橋川製陶所(仁王窯) 6 を訪ねた。陶工の池野幸雄さん(61)がちょうど、器に絵付けをしていた。窓辺には、乾かしている最中だろうかタイに唐草、菊などの古典文様のほかにゾウなどのユニークな絵柄が描かれた器が並ぶ。「仁王はね、エジプト文様などの少し変わった絵柄も特徴なんだよ」と作品を見せてくれた。

池野さんは兵庫県出身。「たまたま結婚した相手が窯元の娘だったんだよ。気がつけば仕事になっていたね」。伝統の窯元を継ぐプレッシャーはいかほどだろうか。「最初のころは『仁王さんはもう終わりだね』なんて言われたこともあったけど、壺屋の人たちが指導してくれて、ここまで育ててくれたんだよ」とにっこり。「だから壺屋には恩返ししないといけないんだ。財産だからね、残していかないといけないでしょ」と強い決意ものぞかせた。

職人さんの心意気にすっかり魅了された。「やちむんの器で食事ができたら幸せだよね」「たくさん働いて、買いに来よう」と会話を交わしながら、温かな気持ちで店を出た。


小橋川製陶所の陶工・池野幸雄さん。器にさらさらと図柄を描く。

花や魚などの絵柄が描かれた乾燥中のぐいのみが並ぶ。

小橋川製陶所のマスコット犬・ニコちゃんの器はやちむんという生意気さ。



は長寿、魚はリッチ?

 

やちむんの器でよく用いられる「魚」「亀」「菊」「唐草」「牡丹」の文様は、縁起が良いとされる図柄です。それぞれが持つ意味を紹介します。やちむんを選ぶときの参考にしてください。

◇魚 富と幸福の象徴。たくさんの卵を産むため子孫繁栄の意味もある。
◇亀 長寿のシンボル。
◇菊 太陽の恵みを象徴する。菊を浸した水は病気を治し、寿命延命をもたらすと考えられていた。
◇唐草 延々と延びていくことから復活・再生を意味する。子孫繁栄の意味もある。
◇牡丹 花の王様とも言われることから幸福、富貴の象徴とされている。

 


 


(2018年10月7日 琉球新報掲載)



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