2019年の干支は「亥(いのしし)」。それで思い出したんですけど、沖縄にも在来の「リュウキュウイノシシ」なるものがいると聞きました。会えるものなら会ってみたいのですが、いったいどんなイノシシなのでしょう?
(浦添市・今日も元気に乾布摩擦さん)
明けましておめでとうございます。読者の皆さまからの依頼により、沖縄県内のさまざまな謎を解明する本コーナー「島ネタCHOSA班」、今年も張り切っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、新年のごあいさつはそこそこにして、本題。いるんですよ、リュウキュウイノシシ。
厳密には「リュウキュウイノシシ」という種ではなくて、ユーラシア大陸に分布するイノシシの亜種(同じ種ではあるが一定の違いが見られるもの)だそうです。
奄美大島、徳之島、沖縄島、石垣島、西表島などの琉球列島の島々に分布、山中に生息しているイノシシを指します。方言では、沖縄本島でヤマシシ、石垣島でウムザ、西表島でカマイなどとそれぞれ呼ばれていますよ。
今回はそんなリュウキュウイノシシに詳しい沖縄国際大学の名誉教授・宮城邦治さんに、その生態や特徴、人々との関わりなどについてお話を伺ってきました。
本土に比べ小型
リュウキュウイノシシは日本本土に生息するニホンイノシシと比べても、同じイノシシ種であるために行動上の大きな違いは見られないといいます。
ニホンイノシシの体重が約100㌔なのに対し、リュウキュウイノシシは大きくてもメスが50キロ、オスが60㌔程度。宮城さんによると「ほ乳類で寒い場所に生息するものほど体が大きくなる『ベルグマンの法則』に加えて、島に住む生き物は体を小さくしている方が(種の保存上)有利なんです」とのこと。肥満問題が叫ばれているウチナーンチュも見習いたいものですね。
さらに、体のサイズが小さいことに比例して牙も小さくなるので、ニホンイノシシのように口の横辺りから牙が出ていることも通常はありません。なので、ルックスもかわいらしい感じです。
1回の出産で4、5頭が生まれます。大体1年ほどで性成熟を迎え、7、8年は生きるそうです。
人間との関わりは?
生息する島々では、山の恵みとして食されることもあります。イノシシが家畜化したブタと比べると肉質は固く、脂身は少なく”野性味のある“肉だといいます。イノシシとブタを交配してできた「イノブタ」は栄養価も抜群として国頭村の特産品にもなっています。
人間とリュウキュウイノシシの歴史は深く、約2万年前の港川人の遺跡からもその骨が出土しているそう。
しかし、もともとイノシシが生息していなかった渡嘉敷島などに外来のニホンイノシシが持ち込まれたりすみ着いたりして、農作物やウミガメに被害が出ている現状もあります。
渡嘉敷島では2011年から約700頭も捕獲していますが、繁殖が早く、捕獲が追いついていません。宮城さんは「外来のイノシシには生態系保護や農作物被害の面からも何らかの対応が必要です」と話します。
その一方、古くからイノシシが生息していた地域では、イノシシが生態系を構成する大切なメンバーとなってきました。
「(在来イノシシが生息する)沖縄本島などでも農作物への被害は見られますが、もしも根絶させてしまうと、逆に自然の仕組みを壊してしまうことになりかねません。イノシシのための空間を残してあげる必要があります」と宮城さん。やっぱり一筋縄にはいかないですよね~。
いろいろ考えさせられるお話もありましたが、調査を終え、干支のイノシシにあやかり、今年も猪突猛進、まい進していきたいと思う調査員なのでした。
(2018年12月27日 週刊レキオ掲載)