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雨で大ケガ だけど不思議と落ち込んでいない理由 100cmの視界から―あまはいくまはい―(49)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

事故に遭いました。

全国的に大雨だった5月21日のこと。めったに使わないカッパを車いすに着装。講演会の仕事に向かっていました。着替えも持っていたので荷物も多い。乗り換えるバスも雨なので混んでいるかもしれないと、急いでいました。

最寄りの駅に着いて、改札にPASMOをタッチしている時、車いすのタイヤが動きづらかったのです。

「どうしたのかな?」と改札を出てから止まろうと思っていたのですが、改札のわずか長さ1メートルの間でカッパがタイヤにからまり、体を覆っていたカッパに引きずられ、車いすから全身が投げ出されて転倒。床に頭を強く打ち、光がバチバチと走り、めまいがして、一瞬何が起こったのか分かりませんでした。車いすが改札にぶつかり、大きな音がしたようで、すぐに駅員さんが来て救急車を呼んでくれました。

事故後、3日ぶりに子どもたちに会えました

検査の結果、頭蓋骨、鎖骨、肩甲骨を骨折。脳に軽い出血。そして、お尻は骨折はしていませんが、全身がとても痛かったです。約10日たち、もうすぐ退院できそうです。

こんな大けがだったのにもかかわらず、自分でも不思議なくらい落ち込んでいません。骨の弱い障害で、今まで何度も骨折しているので「時間がたてば骨はくっついて元の生活に戻れる」と確信しているからです。

唯一の心配は子どもたちのこと。日中は頑張っているようですが、夜は「ママー!」と泣きながら寝るそうです。退院しても、完治するまでは一緒に寝られませんが、いっぱい甘えさせてあげたいです。夫が意外にも頼もしく、子どものことを頑張っています。

雨降って地固まる。事故はもう嫌ですが、得られたものもありました。

そんな事故と同じタイミングで出版した私の本が「ママは身長100cm」(ディスカヴァー・トゥエンティワンから5月25日発売)。今までの骨折のこと、休むことの大切さ、そして周りの人と助け合うことについて書きました。

いま、まさに自分の本に励まされる私がいます。

生きていくのは苦しいこともあるけれど、人って案外強いもの。助け合うことができれば大丈夫だと信じています。

いま、子どもたちの幼稚園のお迎えは、ママ友たちがグループを作って引き受けてくれて、たくさんの友だちが手伝いに来てくれています。本当にありがたいです。私もできる時に、できる方法で、相手の力になりたいです。

果報は寝て待て(?)。1カ月は本当に寝ることしかできませんが、一人でも多くの人に本を読んでもらえると嬉(うれ)しいです。

(次回は6月18日に掲載します)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2019年6月4日 琉球新報掲載)