三浦春馬さん漏らした表現者の苦悩「知らない世界に行きたい」


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《「お別れの会」に関しては、応援してくださった皆さまの沢山の愛で溢れる場にできるよう、2020年内の実施を予定しております》

9月4日、夭折した三浦春馬さん(享年30)の四十九日に、所属事務所は公式サイトで「お別れの会」について、《新型コロナウイルス感染の拡大状況を見ながら、実施の日程や方法を検討》していると発表した。ファンに向け、“情報に誤りがないよう、事実関係を把握し整理することに努めた”と記し、亡くなった7月18日の経緯について改めてこう説明した。

《午後から予定されていた仕事に向かうため、約束の時間に担当マネージャーが自宅へ迎えに行きましたが、メール・電話等に返事がなかったので、部屋へ向かいました。インターフォンを鳴らしましたが応答がなかったため、管理会社の方に連絡し、部屋の鍵を開けていただき入室したところ、すでに意識のない状態でした。応急手当をするとともに、すぐに警察と救急に連絡を入れ、病院に搬送されましたが、懸命な救命処置も及ばず、14時10分に永眠いたしました》

警察による現場検証の結果、事件性は確認されず、自死であるという報告を受けたという。

「所属事務所は年内にも併せて『三浦春馬基金(仮称)』を設立し、今後、三浦さんに関する利益はすべてそこに寄付していくことも発表しました。彼がライフワークとしていた、HIVと闘うラオスの小児病院などに支援を続けるとのことです」(全国紙記者)

三浦さんが亡くなる前日まで撮影にのぞんでいたドラマが『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)だった。

「主演は松岡茉優さん(25)で、お金の使い方にこだわる主人公・九鬼玲子が、三浦さん演じる浪費癖のある同僚・猿渡慶太と繰り広げるラブコメディです。一時は“お蔵入り”とも伝えられましたが、9月15日から全4回で放送されることが決まっています」(テレビ誌記者)

■看板枠で悩む松岡に、優しくアドバイス

放送を強く望んでいたのは、ファンに限らず、松岡も同じだった。8月2日に放送された『松岡茉優 マチネのまえに』(TBSラジオ)では「相手役としてお芝居を受けていた身として、あのすばらしい猿渡慶太を皆さまに見てほしい」と魅力を力説していた。

「局内では“代役”など、さまざまな案が議論されていましたが、結局、収録を終えている4話分で完結するよう脚本を書き直すことに。それにあわせて再撮影することになり、先日すでにクランクアップしました」(TBS関係者)

7月13日に公開され、三浦さんと松岡の対談が見られるドラマの公式PR動画の再生回数は5日現在、565万回を突破している。三浦さんは、クランクイン前から松岡をかばう頼もしさを見せていたという。

松岡「(三浦さんは)どんなことが起こっても前向きにとらえてくれる。(私は)セリフを失敗したらとか、常にいちばん最悪なことを考えている」

三浦さん「だから、いつも動じないんだ!」

三浦さんは笑顔で松岡を「職人かたぎ」とたたえていた。前出のTBS関係者は続ける。

「実は、松岡さんは今作がTBSの連ドラ初主演。特に火曜夜10時枠は、近年『逃げ恥』『ぎぼむす』に代表される“TBSの新看板枠”として重要視されています。今年は『恋はつづくよどこまでも』、『私の家政夫ナギサさん』と連続して高視聴率を記録しました。そうしたことも影響したのか、松岡さんは気を張る部分も多く、笑顔の一方で悩んでいた面もあったようです。

三浦さんはそんな彼女の“異変”に気づいたんでしょう。松岡さんが演技に関してスタッフに相談していたとき、『どんな芝居をしても大丈夫。もっと自由でいい。僕がすべて受け止めるから』と優しく声をかけたそうです」

■酒席で漏らしていた「自由」への憧れ

別のテレビ局関係者は言う。

「三浦さんは7歳のときに朝ドラ『あぐり』で役者デビューしています。与えられた役柄には、昔からとてもストイックに常に全力投球でぶつかっていました。三浦さん自身、台本や芝居の流れに納得いかないときは、演出をめぐって監督やプロデューサーと意見を闘わせていたそうです」

三浦さんには“カメレオン俳優”として、イケメンヒーローから殺人者、詐欺師まで、さまざまな役柄の仕事が舞い込んだ。

「同じ事務所で同世代の賀来賢人さんが連ドラ『今日から俺は!!』や『半沢直樹』、後輩の吉沢亮さんは来年の大河ドラマ『青天を衝け』の主演になるなど、周囲から刺激を受けていたようです。三浦さんは近年、演技・歌・ダンスと三拍子そろった才能を生かしミュージカル俳優としても非常に評価が高かった。特にドラアグクイーンを演じた『キンキーブーツ』では、自宅でもハイヒールを履くほど役作りに没頭していました。

逝去後、『キンキーブーツ』の映像化を求める署名活動は6万人を越え、所属事務所も15分程度の特別映像を後日、アップすることを発表しました」(舞台関係者)

しかし、三浦自身、“表現者”として将来像に悩んだこともあったようだ。彼と2年ほど前に酒席をともにした関係者はこう語る。

「春馬さんは真面目な性格ですが、飲むと自分の思いを熱く語ってくれました。少し悲しげな顔で冗談交じりに、『俺のことを知らない世界に行きたい』とか、『この年になったからって、自由にはやれてない。いろんな人の目があるから。結局は自分の行動に制限はある』といった話をしていました。“もっと自由に”という憧れを強く抱いていた印象を受けました」

後輩の松岡が目の前で思い悩む姿を目の当たりにしたとき、三浦さん自身の渇望から「自由でいい」と訴えたかったのだろうか——。

所属事務所は今回の四十九日の文面の最後でこう結んでいる。

《ファンの皆さまにおかれましては、これからも彼自身の作品や、その姿が皆さまの中で輝き続ける事を心より願っております》

三浦さんの魂の遺作を胸に焼き付けたい——。

「女性自身」2020年9月22日号 掲載

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