地方部記者が担当地域のイチオシを紹介する「J(地元)☆1グランプリ」。3月8日は琉球民謡に欠かせない「三板(さんば)の日」ですが、国連が定めた「国際女性デー」でもあります。そこで、大好きな道を精いっぱい突き進む女子中高生を紹介します。各地域で好きな道をとことん追求し続けている彼女らの姿を見ていると、大人顔負け…。
トロンボーン ★ 名護中2年・川上美姫さん
「目指せ全国」合言葉
夕方の優しい日差しが差し込む名護中学校に、時に力強く、時に繊細にトロンボーンの美しい音が響く。音の主は同校2年の川上美姫さん(14)。今年1月に行われた吹奏楽の県ソロコンテストで準グランプリに選ばれた。金色に輝くトロンボーンを自在に操り、聴衆を華やかな音楽の世界に導く小さなトロンボニストだ。
トロンボーンは、スライド管と呼ばれる管を前後に動かすことで管の長さを変え、音の高さをコントロールする。「息の強弱とスライドワークでどんな音階でも奏でられるのが難しいところで楽しいところでもある」と魅力を語る。
川上さんはトロンボーンを始めてまだ5年。小学生の時に友人に誘われ吹奏楽部に入部したことがきっかけ。音を出すのに2~3カ月といわれるが、わずか2週間で音出しに成功した。「こもった音だったけれど、うれしかったのを覚えている」と振り返る。
あこがれはソロトロンボーンのパイオニアといわれるブラニミール・スローカー。「音が全然違う、とにかくきれい」。いずれは追いつけるかと聞くと「難しいと思う」と笑った。
指導する名護中学校吹奏楽部顧問の玉城晋教諭いわく「練習の虫」の川上さんが今、力を入れているのはマーチング練習だ。名護中学校吹奏楽部のマーチング最高位は九州大会での金賞。「来年は皆で全国大会」を合言葉に今日も練習に励む。
(佐野真慈)
舞踊 ★ 昭薬付中1年・長崎さくらさん
あでやかに舞い魅了
りんとした表情にしなやかな所作を添え、あでやかな舞で観客を魅了する。舞台を降りると破顔し、子どもらしい表情を見せた。昭和薬科大学付属中1年の長崎さくらさん(13)=中城村=は5歳から8年、舞踊に夢中だ。
中城村の南上原公民館であった琉球舞踊「かぎやで風」の無料講習に、母・由里子さん(51)に連れられて行ったのが始まりだ。大人に混じった幼稚園児は「とにかく先生を見てまねた。楽しかった」と振り返る。
南上原を舞台にした創作組踊「糸蒲の縁」の2013年1月の初演に6歳で出て、観客に強烈な印象を残した。「かぎやで風」を教えていた宮城本流鳳乃會比嘉侑子琉舞研究所(同村)に小1で入門し、日々稽古を重ねている。
「糸蒲の縁」主役・真山戸(めーまとぅー)に憧れ、5歳で台詞(せりふ)を覚えた。すぐには主役を射止められず涙したが、別の役を演じて表現力を増し、小4から現在まで主役を4年連続演じた。ほかの児童が「さくらお姉ちゃんに憧れて」創作組踊に参加するきっかけにもなっている。
18年9月に国立劇場おきなわで初公演した時は、中学受験に臨む小6だった。学習塾の先生に怒られながらも「主役に選ばれたからには練習に行く」と決意し、塾を5カ月休み練習した。公演は成功し、その後4カ月猛勉強して合格も勝ち取った。
「舞踊をすると楽しくて疲れも吹っ飛ぶ。すごい舞踊の先生たちに感じるかっこよさを、見ている人にも伝えたい」とさらなる高みを目指す。将来の夢は「踊れる医者」だ。
(金良孝矢)
ヒップホップ ★ 那覇商1年・上原紅葉さん
英で優勝 夢はプロ
陽気な音楽に合わせ、身長152センチの小柄な体が右に左に揺れる。「嫌なことがあっても踊ったら忘れられる。ダンスがないと、今は生きていけない」。那覇商業高校1年の上原紅葉(べに)さん(16)=那覇市=が爽やかな笑顔を見せる。
母の友達の娘に誘われ、小学2年の時にダンスを始めた。実は相当な飽き性。それがダンスだけは続いた。ジャンルは米国発祥のヒップホップ。「楽しくてやめられない。ハマッた」
昨春、全国大会で初めて準優勝した。大会後、家計の負担を減らそうと、ダンススクールを辞めた。アルバイトで遠征費を稼ぎ、祖母の自宅に父が設置してくれた鏡の前でほぼ毎日、2時間半の自主練を重ねる。
昨年8月、英国で開かれたストリートダンスの世界大会「UDO」に初出場し、16歳以下のソロ部門とバトル部門を制覇。さらに各世代の優勝者の中から選ばれる総合優勝に輝いた。「緊張しかなかったけど、自分の踊りができた。認められてうれしかった」
夢はプロのダンサー。高卒後は渡米し、ダンスを学ぶつもりだ。「ダンスだけは中途半端は嫌。誰もまねできないダンスで、人を感動させたい」
(真崎裕史)
サッカー ★ 平良中2年・新城凛さん
全国経験し更に鍛錬
「自分のプレー一つでチームのメンバーを楽しくし、良い雰囲気をつくることができるプレーヤーになりたい」
澄んだ瞳で目標を語る新城凜さん(14)=平良中2年=は、幼稚園からサッカーを始めた。1歳年上の兄から影響を受けて、遊び感覚でボールを蹴り始めたという。小学生になると、毎年静岡県で開催されている全国少年少女草サッカーにも出場して経験を積み、楽しさを知った。「ゴールを決めた時の達成感が一番」とはにかむ。
平良中学校に女子サッカー部はないため、男子に混じって部活動に励む。「スピードも力も全然違うけれど、でもその分うまくなれる」。昨年11月には、上級レベルの練習経験を積むため、選考会を経て金武町で行われた県のトレーニングセンター(トレセン)にU-14のメンバーとして参加した。「たくさんの刺激を受けたし、課題も見えた」という。
チームメートと連携する中で、自分のしたいことをプレーで相手に伝えること、そして体の小ささを補うスピードと足元の技術を身につけることが目下の課題だ。「これからも、サッカーを続けるつもり。楽しいから」とほほ笑み、真っすぐ前を見つめた。
(真栄城潤一)
「男女差別」解消へ
生活の中に根付く制度や文化、慣習に妙だなと感じたことはありませんか。会社などでも、なぜか制服を着ているのは女性だけ。男性は私服。学校の制服にしてもスカートは女子。スラックスは男子。そんな制度や慣習を通して、識者は「男女格差が刷り込まれている」と指摘します。制服に限らず、「男女格差」の解消に向け世界では法律、制度も駆使して是正に乗り出しています。日本は戦後に憲法14条で平等原則を規定しました。
今回は国際女性デーにちなみ多彩な分野で、その道を極めようと励む女子中高生を紹介しました。普通に受け止められてきた妙な慣習などを打ち破り、平等原則を真に実現する力に満ちあふれています。
(学)
(2020年3月8日 琉球新報掲載)