泡盛を飲んでいた時、子どもから「泡盛ってどうやって造るの?」と質問され、うまく答えることができませんでした。黒こうじ麹を使うとか、断片的なことは分かるのですが、全体はよく知らないことに気が付きました。あらためて教えてもらえませんか?
(浦添市 サンタパーパー)
調査員もよく理解してないと気付きハッとしました。沖縄県民として、泡盛の製造工程は知っておきたいですね。
琉球村で工場見学
そんな時、調査員仲間から「恩納村の『琉球村』の敷地内に、泡盛の製造工程を見学できる工場ができたらしいよ」との情報が。 というわけで、調査員はさっそく琉球村へ。琉球村は、沖縄古来の文化・芸能を体感できるテーマパーク。古民家を移築した敷地内を進んでいくと、大きな建物が見えてきました。
この建物こそ、1902年創業の老舗酒造所・咲元酒造の新工場。那覇市首里から移転し、今年の11月1日にオープンしました。壁がガラス張りになっていて、泡盛の製造工程を外から見学できます。
今回、調査員は特別に工場の中に入る許可を得て、佐久本啓社長から泡盛造りについて解説してもらうことに。
泡盛は、沖縄特産の蒸留酒。お酒には、大きく分けて「醸造酒」と「蒸留酒」があります。発酵させて出来たお酒をそのまま飲むのがビールやワイン、日本酒などの「醸造酒」。それに対して、醸造酒を蒸留させたものが焼酎やウイスキーなどの「蒸留酒」。蒸留することでアルコール度数が高く、成分がぎゅっと凝縮したお酒になります。
醸造酒である日本酒は15度前後が一般的ですが、泡盛は25~44度程度が標準。度数が高いのは、蒸留させているからなんですね。
黒麹のパワー
では、泡盛の製造工程を順番に見ていきましょう。
最初に、原料のタイ米を蒸します。泡盛の場合、大正時代から原料にタイ米を使うことが定着したそうで「扱いやすく独特の香りが出る」と佐久本社長(ただし、日本米を使う酒造所もあり)。なお蒸しの工程はデリケートで「何回やっても、蒸し米機を開ける時は怖いですね」と佐久本社長は話します。
次に、蒸した米に沖縄ならではの黒麹を散布し、かくはん撹拌。黒麹菌は、アルコール発酵に必要な糖分を生み出してくれると同時に、クエン酸を大量に生み出し、腐敗を防いでくれるのだそう。黒麹菌が温暖多湿な沖縄で用いられるのには、そんな理由が!
黒麹菌が繁殖すると米の温度が上がるため、三角棚に移し、送風で一定の温度をキープ。一晩寝かすと米麹ができ上がるので、水と酵母菌を混ぜ「もろみ」を造ります。もろみをタンクの中に入れると、酵母菌の働きにより米麹の糖分からアルコールが生成。温度を管理しながら20日間寝かすと、アルコール度数17~18度のお酒ができます。
これを蒸留機で蒸留すると完成…と思いきや、もうひと手間が必要。なぜかというと…。「蒸留後直後にできる泡盛の原酒は、アルコール度数50度前後。加水して45度以下にして貯蔵タンクに移し、最低でも3カ月~半年ほど熟成させます」。水がなじむのにそれぐらいの時間がかかるのだとか。熟成後、ビンに詰めて出荷します。
ちなみに新工場で最初に造った泡盛は、来年の春以降出荷される予定。今から楽しみですね。
琉球村での工場の見学(有料)は、現在コロナ対策のため金曜~日曜のみ可能。
問い合わせは琉球村 ☎ 098(965)1234。
(2020年12月10日 週刊レキオ掲載)