先日、わが家の近所で野良猫への餌やりさんを見かけました。野良猫を増やさないため、捕獲して不妊去勢手術にこぎつける保護活動のようです。詳しく知りたいです。
(那覇市 寅年生まれの猫舌さん)
調査員が住む地域でも野良猫が増えて困っています。安易に置き餌をする人がいて、ご飯にありつく猫たち。食べこぼし、ふん尿、夜鳴き、そして子猫が生まれ… 野良猫の迷惑行為は連鎖するばかり。
解決の糸口を探ろうと、調査員は例の餌やりさんについて、近隣にアンテナを張り巡らしました。
餌やりさんの正体は
「野良猫に餌をやっている人たちがいる」――。年末の夜10時過ぎ、調査員のスマホに知人からのメールが。ついに餌やりさんたちと接触できたのです。
場所は近隣のとある駐車場。街灯の下、餌が置かれたそばに捕獲器が用意されています。声をかけると、「ご迷惑をかけてすみません」と、低姿勢の女性二人。聞けば、隣接する飲食店付近の野良猫たちをおびき寄せている最中だとか。二人の正体は、「のらネコ たすけ隊」の田代全子(まさこ)さん=浦添市と、慶田裕子さん=那覇市。
住宅街や商業地域に集まる野良猫を捕獲し、動物病院に避妊去勢手術を依頼して、その印に片方の耳先をV字にカットする、いわゆる「さくら耳猫」として元の場所に放しているそう。「ただの猫好きたちが増える野良猫を勝手に心配して、趣味でやっていること。当然、猫が嫌いな人もいるわけで、そこは許してほしい」と、たすけ隊。
おととしの夏、浦添市で起こった黒い野良猫の毒殺事件。「殺された猫はさくら耳猫だった」と田代さん。それ以前、個人で地道に30匹ほど野良猫を保護し続けてきたものの、動物虐待にいたたまれず、たすけ隊を発足したと言います。現在、隊員は4人。隊員の一人は、行き場のない猫107匹を預かっているそうです。
ほぼ毎日、餌やりを担う慶田さん。おととしの10月、自宅付近で友人と保護した眼球突出の野良猫を知人を介して、たすけ隊に託すことに。以来、隊員として活動に参加しています。
餌やりも避妊去勢も
県内の野良猫について、「ペットショップに並ぶ品種が多い。人気の長毛猫や、シャム猫に代表される“洋猫”が過酷な野良社会に転じたのは、かつての米軍統治下で軍人軍属が帰国する際に置き去りにされたり、昔ながらにネズミ捕りとして室内外で飼われたりした背景があったのでは」と、田代さん。
野良猫は一回の出産で5、6匹を産み、その2カ月後にはまた妊娠できる体に回復。その子猫も生後6カ月で繁殖できる体に成長するとか。「だから餌やりと避妊去勢手術はセットです」と、たすけ隊は殺処分を避ける野良猫の減らし方を力説します。
たすけ隊は、公益財団法人どうぶつ基金が勧める「T(トラップ=捕獲)N(ニューター=不妊手術)R(リターン=猫を元の場所に戻す)」を基軸に活動しています。不妊手術費用は、どうぶつ基金へネットで申請の上、「TNR無料不妊手術チケット」を入手して賄えます。県内には、ニューター専門協力病院も存在します。
中でも、たすけ隊が苦慮するのが、リターン。「本来猫は元いた場所に戻る習性があります。別の場所に放すと、縄張り争いからはじかれ餌を取られ衰弱して、交通事故に遭いかねない」
そのため、たすけ隊はリターン前にノミやダニの虫駆除を済ませ、戻した後も餌やりを欠かさず様子を見守っています。
避妊去勢手術後の猫は、「夜鳴きをしない」「マーキングが減る」「飼い猫に比べて短命」が顕著だそうです。そういえば、調査員の自宅付近でも夜鳴きが聞こえなくなったような…。「その付近で出産の多かった黒猫、子猫を含めて5匹を保護していますよ」と、たすけ隊。戻すにも地域の理解が得られるのか、リターンのタイミングを見計らっているそうです。
今度、耳先カットの黒猫を見かけたら、「一代限りの命だよ。強く生きていけよ」と声でもかけてみようかと思う調査員でした。
(2022年1月13日 週刊レキオ掲載)