バスを改装した古本屋さん!? 【島ネタCHOSA班】


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北谷町砂辺に新しくできた古本屋さんが気になっています。外国のバスを改装したお店ということだけは分かるのですが、詳しい調査をお願いします。

(浦添市 右耳にミニにきび)

絵本から出てきたようなかわいいフォルム

昨年11月にオープンしたブックパーラー砂辺書架(しなびぬしょか)さんですね。インスタグラムでは、開店前からお店が出来上がる様子を投稿していて、調査員も気になっていたところです。さっそくお話を聞きに北谷町にある砂辺書架に向かいました。

89年式のスクールバス

畠中 沙幸さん

調査員を迎え入れてくれたのは、砂辺書架店主の畠中沙幸さん。

畠中さんは北谷町砂辺出身の一児のお母さん。「将来は沖縄に還元できるようなことがしたい」という思いを胸に海外の大学を卒業後、東京で勤務。21年に、出産とコロナ禍を機に帰郷しました。

「沖縄と子どもと本を組み合わせたことをしたくて、選択肢はいろいろあったんですけど、昔移動パン屋さんとか好きだったことを思い出して、そこで移動本屋みたいなのもいいかも、と」と畠中さんは振り返ります。

自分で運転できるような小さな宅配車を想定していた畠中さんのもとにやってきたのは、アメリカのスクールバスが売りに出されているという知らせでした。

「スクールバスと本屋さんって親和性良いなと思って、直接見に行って、一目ぼれでした」

バスは、キュートなイエローが特徴的なアメリカ産の89年式スクールバス。畠中さんが購入する前までは、教会の送迎バスとして利用されていたといいます。

バスが現在の本屋さんのかたちになるまでおよそ2 カ月。アンティークの良さが残るよう、通路に使われていた鉄板は壁掛けの文庫棚に、バスの座席は椅子に再利用しています。

なんと、バスは今でも走行可能だそうですよ。

新たな交流の場として

バス前方には教会送迎車時代

昔から子どもと本が好きだという畠中さん。店内には絵本や図鑑、沖縄関係の書籍が数多くあります。

「子どもが生まれてから分かったんですけど、絵本とか児童書って意外と高くて。それにすぐボロボロになるんですよね。子どももわざとじゃないと思いつつ、内心『あんなに高かったのに……』ってなることもあるので。その点、古本だと比較的ハードルが低く、出合うチャンスも増えて、少しでも子どもの『好き』が増えると楽しいかな、と思います」

本棚を見ると、キャラクターものの絵本から、読み聞かせにうってつけな児童書までさまざま。なかには市場に出回っていない沖縄の絵本なども取り扱っているといいます。

「『せっかく沖縄に住んでいるから、子どもに沖縄のことを知ってほしい』という方が購入していく」のだそう。

砂辺書架を「本屋さんっぽくない本屋さん」と話す畠中さんの今後の目標は「地域の交流の場や、多文化・多世代の交流の場にする」こと。

「平日はまだそんなに多くないんですけど、週末は世代も全て入り乱れるんです。それがとても楽しくて。子どもたちが遊んだり、初対面の人同士が一冊の本を挟んでお話していたりして。お互いが楽しく楽になれる空間になっています」と畠中さんはにこやかに話してくれました。

砂辺書架では、ほとんど毎日新しい本を入荷しているそうです。本も人も、その出会いは一期一会だなあ、としみじみ思った調査員。北谷町に新しくできた黄色いバスの本屋さんは、本や人が自由に行き交う停車場のようなお店でした。


〈ブックパーラー 砂辺書架〉

〒904-0111
中頭郡北谷町字砂辺44
(時間)12:00~16:00
(休)日・月・火

(2023年3月2日 週刊レキオ掲載)