お金持ちだけじゃない! いつかは誰もが当事者に
『相続』という言葉を聞いて、実感がわきますか?
「相続」という言葉はよく耳にする言葉ですが、「うちの親は元気だから・・・」と日常生活ではあまり実感のわかないものです。しかし、親や配偶者が亡くなったときなど、誰もがいつかは直面する問題です。弁護士として、私はこれまで“いざ”に遭遇した方々から「どうすればいいのかわからない」という相談を数多く受けてきました。
相続の問題は人々の暮らしと密接に関わっているため、各家庭の事情はもちろん、地域性やその土地の風習も色濃く反映されます。私が住む沖縄では特に、「トートーメー(位牌)や仏壇を誰が継ぐか」といった特有の問題があります。
これからウェブマガジン琉球新報Styleで、「相続」にまつわるさまざまな問題について、弁護士の立場から「必ず役立つ相続情報」を紹介していきます。
(次回は4月21日に公開します)
具体事例を交えて分かりやすくお伝えするため、オリジナルキャラクターの「天久さん」にも登場してもらい、Q&A方式でお伝えします。
今回のテーマは「相続トラブルに遭うのはどんな人?」です。
金持ちだけじゃない! “普通”の家庭でも…
尾辻弁護士
さて、「相続」トラブルはどういった方に起きる問題だと思いますか?
天久さん
うーん、資産家とか、お金持ちの人じゃないですか?
尾辻弁護士
テレビなどで見聞きするのは、お金持ちのトラブルがほとんどですよね。「うちには、あまり財産はないから関係ない!」と思っている方も多いのではないでしょうか? でも実は、ごくごく普通の家庭でもよく起きているんですよ。
もちろん軍用地などが絡むと億単位となることもあります。
(嘉手納町にある軍用地の場合、場所によっては土地の価値が、年間軍用地料の40倍!!なんてところも)
実際に、“財産の総額が2~300万円”といったケースでもめることも多いんですよ!!
天久さん
そうなんですか!? 自分には関係ない話だと思っていました。
尾辻弁護士
そして実は資産家の方ほど、しっかりと対策しています!!
財産はいつまでに分けたらいい?
尾辻弁護士
まず「相続」とは、亡くなった方の財産を、お子さんや配偶者などの「相続人」が受け継ぐことをいいます。亡くなった方を「被相続人」といいます。「相続」は、「被相続人」の死亡と同時に始まります。亡くなった時点で、亡くなった方の財産は、相続人全員で共有することになります。
天久さん
死亡と同時に「相続」が始まるのですね! 私には母親と兄弟が3人いますが、父親が死亡した場合、父親の財産はいつまでに分けたらいいですか?
尾辻弁護士
亡くなった方の財産を、相続人でどのように分けるか決めることを、「遺産分割」といいます。
「遺産分割」はいつまでにしなければならないという期限はありませんが、相続放棄の期限(相続の開始を知った時から3カ月以内)や、相続税の申告・納付期限(相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内)という2つの期限があるので、できるだけ早めに遺産分割を始めましょう!!
とはいえ、お通夜やご葬儀の席で、遺産分割の話をするのはさすがに気が早いので、四十九日が明けて始める方が多いです。
「相続」を「争族」にしないために
天久さん
「相続」については、弁護士さんに早めに相談した方がよさそうですね! ところで「相続」のトラブルは、どのようなときに起こるのですか?
尾辻弁護士
親が亡くなった場合では、親を介護していたお子さんと、そうでないお子さんの間でトラブルになりやすいです。
特に、親の介護の大変さを訴える方が多いですね。
介護をしてきたお子さんの中には、「相続でもめるくらいなら、親の面倒をみるのではなかった」とおっしゃる方もいます。
また、県内では、仏壇やトートーメをめぐってトラブルとなるケースも多く、仏壇やトートーメを継ぐお子さんが、「仏壇やトートーメを継ぐのは何かと大変で、費用もかかるから兄弟より財産を多くもらいたい」と相談に来られるケースも多いです。
天久さん
家族の問題だからこそ、色々ともめそうですよね。
尾辻弁護士
「相続」は、被相続人の財産をめぐって家族が争う問題ですので、「争う」「家族」と書いて「争族」と呼ばれることもあります。
親は「うちの子たちは仲がいいのでうまくやってくれる」と思いがちです。
しかし、なかなか、そうなるとは限りません。
残される家族のための「終活」を
尾辻弁護士
皆さん、「終活」という言葉を聞いたことがありますか?
天久さん
人生の終わりに向けて、事前に準備を行うことですよね。
尾辻弁護士
その通りです。残される家族のために「相続」を考えることも、「終活」には不可欠です。「相続」は、人生を振り返り、家族のこれからを考えるよいきっかけとなります。
いずれ詳しく紹介しますが、生前に「遺言書」を作成しておくと、「相続」トラブルをできるだけ避けることができます。「相続」では、被相続人のお気持ちを明らかにした「遺言書」の内容が優先されるからです。
いきなり「遺言書」を作成するのにはためらいがあるという方は、書店で販売されている「エンディングノート」から始めてもいいでしょう!
目を背けがちな「相続」。残される大切な家族のために、今のうちから取り組んでおくことをお勧めします。
― 執筆者プロフィール ―
弁護士 尾辻克敏(おつじ・かつとし)
中央大学法学部、中央大学大学院法務研究科卒業。司法試験合格後、県内にて1年間の司法修習を経て、弁護士業務を開始。常に相談者の話を丁寧にお聞きし、きめ細やかな法的サービスを的確かつ迅速に提供し、全ての案件に誠心誠意取り組んでいる。
相続問題・交通事故、企業法務等を中心に取り扱う。相続問題では、沖縄の風習や慣習、親族関係にも考慮した適切な解決を心がける。
~法律問題でお困りの際は、お一人で悩まず、私と共によりよい解決を目指しましょう!~
島袋法律事務所 弁護士 尾辻克敏
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