「父親が最近亡くなり、10年以上暮らしていたわが家が借地だったことが分かりました。地主さんから土地の明け渡しを求められているのですが、立ち退かなきゃいけないのでしょうか? 僕は当面、住み慣れた家を離れたくないのです」
那覇市内に住む20代の男性から上記の相談が寄せられました。男性は中学時代から10数年、父親が建てたこの家で、父子2人で暮らしてきたそうです。
このような場合、地主さんと男性、どちらの主張が認められるのでしょうか?
沖縄の相続問題に詳しい尾辻克敏弁護士に解説してもらいました。
≪借地権は相続できる!≫
相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利や義務を承継します。そのため、この男性は地主さんと父親とが締結していた借地契約(土地を借りる契約)の借地人の地位、すなわち借地権を、当然に引き継ぐことができます。
なお、借地権を引き継ぐにあたり、地主さんの承諾をもらう必要はありません。地主さんから名義変更料を要求されても、支払う義務はありません。
≪借地人に不利な約束は無効となることも!≫
地主さんは、土地を貸すのは父親の代までと話していたようです。しかし、仮に借地契約で父親との一代限りとの約束があったとしても、借地借家法3条では借地権の存続期間を30年と定めているので(契約で30年より長い期間と決めた時はその期間)、これに違反する借地人に不利な約束は、借地借家法9条により無効となります。
そのため、地主さんは父親との約束を理由に、土地を返すよう要求することはできません。
≪借地権は借地借家法で手厚い保護が!≫
借地借家法では、地主と借地人とが借地権の存続期間を決めなかった場合、借地借家法3条により、存続期間は30年となります。男性のケースでは、父親が地主さんから土地を借りた時から、この存続期間を算定することになります。
仮に父親が土地を借りた時から30年を超えていたとしても、借地契約は更新されている可能性があります。更新された場合の存続期間は、借地借家法4条により、最初の更新で20年、それ以後の更新で10年となります(なお、これより長い期間を決めた時はその期間)。
また、仮に借地権の存続期間が満了する場合でも、地主さんが相当額の立退料を提示するなどの正当事由が認められないと、地主さんは借地権の更新を拒絶することはできません。
このように借地権は、借地借家法により手厚い保護がされているため、地主さんは借地人から簡単に土地を明け渡してもらうことは難しく、一度土地を貸したら返ってこないなどと昔からよく言われるものです。
≪早期の遺産分割が大事!≫
もし男性にきょうだいがいるなど、他に相続人がいる場合には、男性が建物と借地権を相続する内容の遺産分割をしていないと建物は相続人全員の共有となり、法律関係が複雑になります。
場合によっては、他の相続人から、建物の賃料相当額などの請求をされたり、明け渡しを要求されたりすることもあります。そのため、父親の建物に住むのであれば、早期に遺産分割を行うことが大切です。
― 執筆者プロフィール ―
弁護士 尾辻克敏(おつじ・かつとし)
中央大学法学部、中央大学大学院法務研究科卒業。司法試験合格後、県内にて1年間の司法修習を経て、弁護士業務を開始。常に相談者の話を丁寧にお聞きし、きめ細やかな法的サービスを的確かつ迅速に提供し、全ての案件に誠心誠意取り組んでいる。
相続問題・交通事故、企業法務等を中心に取り扱う。相続問題では、沖縄の風習や慣習、親族関係にも考慮した適切な解決を心がける。
~法律問題でお困りの際は、お一人で悩まず、私と共によりよい解決を目指しましょう!~
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