7月に沖縄・奄美の世界自然遺産への登録が決まって思ったのですが…。ノグチゲラは沖縄県の県鳥でありながら、意外とその特徴などが一般に知られていませんよね。あらためてノグチゲラについて教えてください。
(那覇市 くもじのくもじいさん)
言われてみれば、調査員もノグチゲラについてあまり知らないことに気付きました。
というわけで調査員は、1999年から環境省ノグチゲラ保護増殖事業の標識個体追跡調査に携わっている渡久地豊さんのもとへ。一問一答形式で質問にお答えいただきました。
嘴 (くちばし)で土を掘る!?
ノグチゲラは国の特別天然記念物なんですよね?
「はい。ノグチゲラは世界でも沖縄本島のヤンバルの森にしかいないことから、郷土を代表する鳥として、72年に『沖縄県の県鳥』に選定されました。77年には、希少な鳥として『国の特別天然記念物』に指定されました」
名前の由来は?
「1886年、英国人のジェームズ・プライヤーさんに同行し、8月に一羽のキツツキの幼鳥を採集した日本人のノグチさんが和名の由来になっているようす」。ちなみに「ゲラ」とはキツツキを表します。
外見の特徴は?
「全長は約30センチで、オスとメスはほぼ同じ大きさです。体重は約140㌘。体の色は暗褐色ですが、頭頂が赤い色をしているのがオスで、黒っぽい色をしているのがメスです。ヒナはオスもメスも頭が赤い色をしています。翼にはいくつもの白い斑点があります」
生態を教えてください。
「一夫一妻で一度つがいが形成されると、パートナーが死ぬまでつがいは継続します。同じパートナーと毎年1回だけ繁殖します。巣は、おもにイタジイなどの幹に穴を掘ります。産卵数は2~5個。卵は白色。孵化(ふか)まで約12日。ヒナは約30日で巣立ちします。寿命は10年以上あることが分かっています」
夫婦の絆がとても固いのですね! ヒナのエサには何を与えているのですか?
「ヒナに甲虫類の幼虫やクモ類、ムカデ、キセルガイ、タブノキの実、ヤマモモの実などを与えます。特にオスはセミの幼虫や地上性のクモを、地面におりて嘴(くちばし)で土を掘って捕らえ幼鳥に与えます。オスのこの行動は他のキツツキ類ではみられない独特な採餌行動です」
知ることが保護への一歩
ノグチゲラはなぜ生息域が限られているのですか?
「キツツキ類は森林に生息する鳥類。ノグチゲラが繁殖し持続可能な森林は樹齢が50年以上の森林です。森林の伐採やその他の開発行為が生息域を減少させてきました。マングースの侵入もノグチゲラにとっては大きな脅威です」
ノグチゲラは現在、何羽ぐらい生息していますか?
「以前は100羽程度とされていましたが、90年代の詳細な調査結果では、400羽程度と推定されました。現在、2010年代の調査結果から個体数推定の論文化に取り組んでいます。最新の個体数推定については来年発表される見通しです」
保護のために私たちにできることは?
「第一歩はノグチゲラを知ることです。渡りをしないノグチゲラは沖縄島の森林で脈々とその命をつないで、世界でここにしかいない希少なキツツキへと進化していったのです。この島でノグチゲラと共に生きていることを皆さんが実感することが保護につながるのではないでしょうか」
* * *
最後に、観察について聞いてみると…。「木陰に隠れるためじっくり見るのは難しいながらも、早朝に林道を散策すると出合う機会が多いかもしれない」とのこと。デイゴの花の蜜を飲む習性もあり、4月~5月が最も観察しやすい時期だそう。爽やかな朝の林道で、ノグチゲラに出合えたらいいですね。
(2021年8月26日 週刊レキオ掲載)