新たな機能「集中モード」から考える スマートフォンとの向き合い方 モバプリの知っ得![148]


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Apple社は9月21日、iPhone用の新しいOS「iOS 15」の配信を開始しました。iOS 15にアップデートすることで、新機能「集中モード」が使えるようになります。集中モードとは、アプリからの通知(お知らせ)※1を制限し、スマホの「鳴る回数」を抑えて勉強など自分の時間に集中しやすくする機能です。すでに、一部のAndroidスマートフォンでは似たような機能が使えます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

「デジタルウェルビーイング(幸せなデジタル生活)」機能を使う モバプリの知っ得![91]
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こうした機能が登場した背景として、「スマホ依存」が世界的に問題視されているということがあります。スマホから1日に何度も通知が来ることで、私たちはスマホを確認しアプリを開きます。「アプリ製作者はなぜ1日に何度も通知を送るのか」というと、簡単に言えば私たちがアプリを使えば使うほど製作者が儲かるようにできているからです。※2

私たちは多くのアプリを無料で使えていますが、その理由はそれらが広告収入で成り立っているからです。そうしたアプリはユーザーが使用する時間が多ければ多いほど、多くの収入を得ることが出来ます。こうした構造を「アテンション・エコノミー(関心経済)」と呼びます。私たちの集中力と時間を奪い、お金に変えているのです。

「スマホの利用は○時間までと決めているのに守れない…」と悩んでいる人も多いと思いますが、それも当然の話です。なぜなら巨大IT企業は、お金と技術とデータを注ぎ込んでアテンション・エコノミーを作り上げており、ちょっとした意志ではスマホの利用時間を減らせるはずがないのです。

私たちが何気なく使っているアプリには、一つひとつに意味があって人の興味・関心を引くための仕組みが散りばめられています。各企業は「どうやってユーザーの時間を獲得できるか」というテーマに尽力しており、ユーザーがスマホから離れられない仕組みが盛り込まれています。

そんな中、新たにiPhoneに追加された「集中モード」を意識して使うことで、少しはスマホ利用時間を守りやすくなれるかもしれません。もちろんこの機能を使っただけで、スマホ依存を脱せるという簡単な話ではありませんが、改めてスマホライフを見直すためのいい機能だと思います。私たち大人は、子どもに対してどうやってスマホのルールを守ってもらうか日々頭を悩ませていますが、それと同時にその問題に対して、私たち大人も向き合わないといけないのです。親子でスマホルール決めることは大事ですが、「アテンション・エコノミー」のような構造があることを認識した上で、ルールを考えることが大事です。

※1 アプリからの通知…「メッセージが届きました」「お得なキャンペーンがスタートします」など、スマホアプリからのお知らせのことを通知と呼びます。あわせて、アプリアイコンに表示される赤い数字を通知バッジと呼びます。

※2 アプリを使えば使うほど製作者がもうかる…スマートフォンアプリやゲーム、Webサービス、SNSの多くは、ユーザーの支払いは無料で、広告企業からのお金が収入になっています。ここまではテレビ、ラジオと同じ構造なのですが、スマホの場合、私たち一人一人に興味のあるコンテンツ・広告を分析し連続して表示することが可能なので、つい見入ってしまい利用時間がどんどん伸びていきます。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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