知人から浦添に「うらそえ織」という地産の絹織物があるということを教えてもらいました。興味があるのですが、どんな織物か見に行って教えてくれないでしょうか。
(那覇市 おかいこさん)
調べてみると、浦添市の伊奈武瀬に「うらそえ織」を作って展示販売している「浦添市養蚕絹織物施設 サン・シルク」という建物があることが判明。行ってみましょう!
なぜ浦添で絹織物?
国道58号を那覇から北上し、安謝交差点を左折。6分ほどで左手に那覇港新港ふ頭が見えてきたら、もう少し直進して右折、「ホテルモーリアクラシック沖縄」方面へ。2分ほど直進すると見えてくる「いなんせ会館」の後方に「サン・シルク」を発見。
建物は、1Fがうらそえ織の商品を展示販売する「ショップ」で、2Fは機織りの職人さんが作業する「工房」。ショップをザッと見渡すと、うらそえ織のストラップやポーチ、ネクタイ、名刺入れ、シャツ、ショールと、うらそえ織の商品がズラリ。
工房ではうらそえ織協同組合の代表理事・親富祖幸子さんがお出迎えしてくれました。
「浦添市は無農薬の畑が多いので、桑を栽培して、天然の桑の葉を食べた蚕のまゆから糸を引いて(取って)、絹織物を作っているんです。桑の葉は栄養価が高くお茶もつくれますし、桑の実ではワインも造れるんですよ」と、にっこり。
蚕は卵からふ化して3日目までは「1令」といい1~2ミリの小さな蚕だそうですが、25日ぐらいすると「5令」の7~8センチの大きさの蚕に成長するとか。蚕の種類によっても異なるようですが、蚕は頭を8の字に揺らしながら糸を吐き、自分のまわりにおうちとなる「まゆ」を作るそう。
「調査員さん、まゆの『マンション』と呼ばれるものを見たことありますか? 蚕は上に登る習性があるので、自分で登っておうち(部屋)を見つけて糸を吐いて、まゆを作るんです」と、まゆを触らせてくれます。
調査員がびっくりしたのは、蚕はまゆを完成させるのにおよそ2~3日で約1100~1400メートルの糸を吐くこと。蚕の小さい体から1㌔メートル以上の糸が出てくるなんてすごい。
太陽の絹に思いを
次に「うらそえ織」について聞いてみました。
「うらそえ織のデザインは浦添の歴史伝説から『2人の女性』をモチーフにしています。1人は舜天王の母、もう1人は尚寧王の王妃。いにしえの女性の愛・芯の強さ・育む力を3本の糸で表し、浦添市のシンボルでもある『太陽』が輝きを放って未来へと導く意味が込められています。合計4本の糸(ライン)がうらそえ織の特徴だと、ようやく浸透してきたかなと思います。まだまだ試行錯誤中なので、今後も違う柄は登場してくると思います」と、親富祖さん。
サン・シルク管理事務所所長の真栄城孝文さんは「僕は浦添市役所を定年退職後にこちらに来ました。織物の歴史や昔の人々の生きる力に触れられる施設なので、総合学習にもとても良い施設ですよね」とコメント。
工房では、スタッフが機織りをする心地よいリズムが響きます。機織り研修生の女性は「ここに見学に来たとき先輩方に『機織りは長く続けられる仕事だよ』と教えられ、生涯の職の選択の一つとして研修を受けています」と笑顔。
工房は年間を通して誰でも見学OK。「はた織り体験」も常時実施中。初心者向けにはコースター(千円)としおり(8百円)、中級・上級者向けはショール(2万円)。養蚕体験や夏休み子供体験、糸引き出前講座も。
デジタルな世の中だからこそ、手作りが愛おしい。沖縄の昔の人々が紡いだ知恵と温かさに今だからこそ触れたいと思った調査員なのでした。
〈問い合わせ〉
浦添市養蚕絹織物施設「サン・シルク」
管理事務所
TEL 098-943-3469
(2023年5月11日 週刊レキオ掲載)