障がい者らが本格コーヒー提供
扉を開けると焙煎したコーヒーの香りが店内に広がる。就労支援事業所「ワーカーズホーム」が昨年末オープンした「ワーカーズホームカフェ」。カフェ運営を通して障がい者や依存症者の就労支援を行っている。ハンドドリップコーヒーの他、エスプレッソベースの本格コーヒー、焼き菓子などを提供する。代表の横山順一さん(50)は「気軽に立ち寄ってもらえれば」と期待する。
宜野湾市大謝名にある「ワーカーズホームカフェ」。一般企業で働くことが難しい人に就労機会を提供する就労継続支援B型事業所の「ワーカーズホーム」が助成金を活用し開店させたカフェだ。
営業時間は平日の10時から15時。10人前後のスタッフが午前と午後に分かれて支援員と共に無理のないペースで働いている。外国産のコーヒーの他、浦添市内にある自家農園で農薬を使わずに栽培されたコーヒー、カフェインを取り除いたデカフェ、水出しコーヒー、カフェラテ、カプチーノ、スコーンなどのメニューがそろう。
本物の環境での経験を
「カフェというからには、本物の器具を使いたかった」と話す代表の横山順一さん。店内にあるのは、イタリア製のエスプレッソマシンやコーヒー豆を粉にするグラインダー、大型のガスオーブンなど業務用の器具だ。エスプレッソマシンとグラインダーは9月に導入。スタッフたちはエスプレッソやカプチーノ、ラテアートなどの練習に日々励んでいるという。
カフェを運営する「ワーカーズホーム」は2013年にオープン。カフェ事業の他、自家農園でのコーヒー栽培からコーヒー豆の焙煎、販売まで、コーヒー関連の作業を行っている。施設の利用者は知的・精神・身体の障がい者やアルコールやギャンブルなどの依存の問題を抱える人。その日の体調に合わせ、それぞれの仕事内容が決められている。
東京出身の横山さんが支援事業に携わり始めたのは、約24年前。仕事に疲れ移住した沖縄で、障がい者や依存症者の支援を手伝うようになってからだ。
相談員として全国からの電話相談を受けていくうちに、「相談は匿名で、1回で終了することが多く、その後を追えなかった。実際に会ってサポートしたいという思いがわき、ホームを立ち上げた」と振り返る。
コーヒーの事業を選んだが、コーヒーについては素人。多くの人に支えられた。アドバイスをくれたコーヒー店やコーヒー農園、カフェの内装を手掛けてくれた精神科医などのサポートがあって今に至る。
社会で働く一歩に
「僕たちは農園もカフェも『ごっこ』。でも、本物を使った究極のごっこ」と表現する横山さん。本格的な器具を使っているのには理由がある。「利用者が今後社会に出て働きたいとなった時に、ここでの経験がすぐにキャリアとして生かせるようになれば」という思いからだ。カフェで使用するエスプレッソマシンはエスプレッソやラテアートの国際大会でも使われている機械。「大会に出てみようかなという人がいつか出るかもしれない」と夢は膨らむ。
カフェには近所で働く人や在宅勤務の人などが訪れる。接客するスタッフは、緊張して間違えたり、うまくいかなかったり、手が震えたりすることもある。そんな時も来客者が「頑張れ」「ゆっくりで大丈夫」と声をかけてくれているという。横山さんは「間違いを楽しめる人に来ていただけるとうれしい」と語る。
「今後は業務用の焙煎機も取り入れ、就労機会につなげていきたい」と意気込む。カフェはまだまだ進化していきそうだ。
(坂本永通子)
ワーカーズホームカフェ
【住所】宜野湾市大謝名4-4-2 (マップはこちら)
【営業時間】平日10時~15時
【電話】098-953-9906
【ブログ】https://muraokinawa.ti-da.net/
(2020年11月19日付 週刊レキオ掲載)