沖縄ならではの素材も活用
キャンドル作家・飯星りんかさんが制作するキャンドルには、さまざまな草花が埋めこまれている。装飾に用いられるのは、すべて自然の草花だ。ロウの中でわずかに色あせた葉や花弁は、造花にはない陰影に富んだ表情を見せる。「自然の素材を使っているので、一つとして同じものにはなりません」と飯星さんは話す。
飯星りんかさんのキャンドルを最初に目にした時は、新鮮な驚きがあった。何しろ、ロウの中に草花が埋め込まれているのだ。ロウの中から透けて見える、眠るような植物の姿に魅了された。
草花はすべて本物。ブーゲンビリアや月桃の実、緋寒桜など、沖縄ならではの素材もよく用いる。シナモンの木の一種で、「カラキ」と呼ばれるオキナワニッケイ、実の形が美しいヘクソカズラなど、使用する植物はバラエティーに富む。「沖縄の山が好き」という飯星さんは、ヤンバルの森に散策に出かけることも多く、そこで目にした草花も取り入れているそうだ。
作業はすべて1人で
飯星さんが、「ボタニカルキャンドル」と呼ばれる草花を封入したキャンドルに出合ったのは2011年。陶芸に入れ込むなどものづくりが大好きで、結婚後には自宅でアロマの教室を開いていた飯星さんは、「すぐにピピッときて」、 自分でも作ってみたいと思い立ったという。
「でも、当時沖縄には作り方を教えてくれる教室もなくて…。子どもの世話を夫にお願いして、半年ほど月1回のペースで大阪に通って習いました」
技術を習得後、ほどなく作家としての活動を開始。「Blue moon Candle Okinawa(ブルームーン・キャンドル・オキナワ)」のブランド名で、販売も行うようになった。
キャンドルは北谷町美浜のカフェ 「ジバゴ コーヒー ワークス オキナワ」を中心に、県内のデパートやホテル、オンラインなどで販売。キャンドルの制作はもちろん、受注管理などの事務作業、納品まで、すべて1人でこなしているというから驚きだ。
ともすと空気が静かに
キャンドルは1本1本、手作業で丁寧に仕上げる。芯をセットしたモールド(型)に、ワックスを溶かして流し入れ冷まして固めて作る。ボタニカルキャンドルは内と外の二重構造になっており、最初に内側を作ったあと、草花を封入する外側の部分を作って仕上げる。外側の部分は燃えない作りになっているため、草花に火がつく心配はない。
沖縄の海と空をイメージして、青く着色したロウの中に、赤いブーゲンビリアの葉を散布したキャンドルなど、代表的なシリーズもあるが、自然の素材を使うため、同じコンセプトで制作しても1つとして同じものにはならないという。
ロウが固まったら、型から抜いて完成。飯星さん本人も型から抜くまで仕上がりが分からず、「型から抜く時がいちばんワクワクします。スッと抜けると楽しいですね」と笑う。
「実は、作り始めた時はキャンドルをともしたことはあまりなかったんです(笑)。でも、燃焼実験を繰り返すうちに、日常の中にキャンドルが入り込んでいきました。キャンドルをともすと部屋がシーンとして、空気が静かになります。話も弾みますよ」。キャンドルの炎には、人間が心地よく感じる「f分の1」と呼ばれる揺らめきがあると飯星さんに教えてもらった。
これまで自宅で制作を行ってきた飯星さんだが、今年、外に作業場を設けた。今後は、作業場を拠点に、キャンドル作りのノウハウを伝えるワークショップも開催していきたいとの意向だ。
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コロナ禍でステイホームの時間が増えた今年。何かとストレスも多い日々が続くが、時には大切な人と揺らめくキャンドルの光を囲み、くつろいだ静かな時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
(日平勝也)
Bluemoon Candle Okinawa
【店舗】北谷町美浜9-21 ディストーションシーサイド ビル1階
「ZHYVAGO COFFEE WORKS OKINAWA」内 (マップはこちら)
【通販サイト】https://bluemooncand.thebase.in/
【Instagram】rinka.ii
(2020年12月10日付 週刊レキオ掲載)