社会人若葉マークのころのサボり場所は琉球銀行の金融資料館だった。当時は琉球リースビル内にあって会社から近く、人が少ないのもよかった。少しかび臭い本の香りに癒やされた
▼経済書や専門誌、社史がずらりと並んでいたが、琉銀と米国民政府(USCAR)や琉球政府との行政文書などもあった。戦後沖縄経済の「知の集積所」の役割も果たしていたのではないだろうか
▼地域の「知の集積所」というべき図書館で、らしからぬ騒動が起こっている。神奈川県海老名市立中央図書館の蔵書に外国の風俗店案内が含まれていた。佐賀県武雄市図書館では10年以上前の資格試験の対策本など古い実用書が大量購入されていた
▼2館ともレンタル大手のTSUTAYA(ツタヤ)を展開する会社が運営する。ツタヤ側は本選びが「ど素人だった」と釈明した。愛知県小牧市の住民投票はツタヤ図書館計画に「ノー」を突き付けた
▼民間活力で図書館を変えようという意図は分かる。全国初出店となった武雄市図書館は年中無休でカフェを併設したおしゃれな空間になり、来館者は約4倍になった。全国の自治体から視察が殺到した
▼地域に合った知を集め、人を集めるにはどうするか。あらためて問われている。失敗から学び、住民が必要とするサービスを整えることも重要だ。多くの人に読む楽しみと、癒やしを与えるためにも。