<金口木舌>沖縄を「平和な島」に


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 デモ隊はシュプレヒコールを繰り返した。「沖縄差別はやめろ」-。7月17日、東京都にある米軍横田基地周辺で基地撤去の声を上げる人々の中に彼の姿があった

▼自衛官だった小多基実夫さん(66)は沖縄が日本に復帰する直前の1972年4月27日、4人の自衛官と共に当時の防衛庁に要求書を提出した。冒頭にこう掲げた。「沖縄派兵を即時中止せよ」
▼復帰に伴う自衛隊の沖縄配備に反対し、隊員に命令拒否権を認めることなどを求めた。防衛庁は一度も事情聴取せず、5月4日、5人全員に懲戒免職処分を下した。以来、小多さんは反戦活動を続けている
▼防衛省は2日、2016年版防衛白書を発表した。尖閣問題などを念頭に与那国への沿岸監視部隊配備や水陸機動団の新編、那覇基地への第9航空団の新編など離島防衛強化を改めて示した
▼米軍基地の集中に加え、自衛隊増強がこのまま進めば、東アジアの緊張を高め、再び沖縄が戦場になる不安が強まる。小多さんは「南西諸島を主戦場とする中国との戦争準備が急ピッチで進められている」と解説する
▼要求書提出から44年。「自衛隊は不発弾処理や離島の急患搬送などの民生協力、米軍を守ることに力を入れてきた。だが今は日本の戦争政策のための存在になってきた」。彼が力説する「先島を孤立させない」という執念に応えたい。