<金口木舌>宇井純さんの言葉


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 「人生には自然を破壊したり人びとを苦しめたりしないですむ、そういう選択をする機会が必ずある。もし人が生涯にたった一つでいい、本当に良かれと思う選択をしてくれたなら、この社会は変わるはずだ」-。公害問題の第一人者、宇井純さんの言葉だ。11日が10回目の命日だった

▼被害者の立場に立ち続けた宇井さんは、「中立」の立場で傍観するのは加害者と同じだと説いた。それ故に、専門家にも行政にもマスコミにも厳しい批判を向けた。「生涯にたった一つでいい」選択とはそのことを指すようだ
▼12日、沖縄大でシンポ「宇井さん、今の沖縄をどう思われますか?」が開催された。「行動する科学者」から学び、共に行動した人たち75人が集い、議論した
▼1986年に沖縄大に赴任する際、「一番問題のある所に自分は身を置くのだ」と語ったという。新石垣空港建設問題が重大局面を迎え、赤土流出と畜産排水対策も緊急課題だった
▼89年に「科学実験室」を設けた時の予算は500万円。「ここより厳しい実験室は、沖縄より南の国では常識。ここでやることが手本になる」。毎週そこで学外にもオープンのゼミを開いた
▼宇井さんの思想と実践は沖縄の運動に根付いたが、沖縄の環境と人権は、基地問題を軸に危機的状況が続く。「たった一つの選択」という問いを、その重みとともに考える時だ。