「スーキカンナ」は沖縄各地の地名をたどりつつ、土地の特産品を売り買いする楽しい会話を織り込んだ民謡だ。知名定男さんの名を広めたデビュー曲であり、師匠の登川誠仁さんも歌った
▼曲名にもある惣慶、漢那に始まり金武、勝連、照間、越来と地名は続く。山内、諸見里が出るくだりでは名物の山桃が登場する。懐かしがる人もいよう。そんな素朴な愛郷心をくすぐるところに、この歌の魅力がある
▼海の向こうのフォークソング「わが祖国」にもカリフォルニア、ニューヨーク、レイウッド国立・州立公園、メキシコ湾という地名が並ぶ。米歌手ウディ・ガスリーの1940年代の作品である
▼弱き者に寄り添い、ファシズムに抗(あらが)う吟遊詩人だったウディが歌う「この国はあなたの国、この国は私の国」の歌詞は米国民の愛郷心を揺さぶった。「庶民のための国歌」と呼ばれるのも故あること
▼その庶民は今、何を思っていよう。自国の「偉大さ」を喧伝(けんでん)する新大統領はメキシコ国境に壁を築くと宣言し、イスラム圏7カ国からの入国を拒む。歪(ゆが)んだ内向きの愛国心が排除と差別を引き起こしている
▼彼の国だけではない。「日本スゴイ」の連呼にも聞こえる安倍晋三首相の施政方針演説の一方で、公共の電波が沖縄蔑視の暴言と嘲笑をまき散らす。人を傷つけぬ、開かれた愛郷心を取り戻すときではないか。