県内の研究者やジャーナリストでつくる対外問題研究会(代表・我部政明琉球大名誉教授)が「沖縄からの主張」と題する提言を雑誌「世界」に発表した。「台湾有事」が喧伝(けんでん)される中、戦争を回避しようと内外の識者らの提言が相次いでいる。軍事衝突を回避し平和を構築するための知恵を集め、実践することに、力を注ぐべきである。
対外問題研の提言は、沖縄が有事の防波堤ではなく、地域の国々を結びつける「津梁(しんりょう)の島」になるべきだと述べる。そして「安全保障のジレンマ」を促すことになる自衛隊の先島配備の中止を日本政府に要求した。
その上で中国の対外政策を分析し、「一つの中国」という理解の上で「今ある台湾を存続させる『現状維持』を確保することが最善の道」と主張、米中双方が台湾周辺の軍事力を削減する方向にかじを切るよう求めた。
さらに日本が各国に対して「第2次大戦後の米国の経済力、軍事力に依拠した北東アジアの秩序維持から、新たな秩序づくりに着手するよう説得すべき」だと求めた。
昨年12月15日には研究者、市民団体による「平和構想提言会議」(共同座長・青井未帆学習院大教授)が「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」を公表した。防衛政策の大転換となる安保関連3文書改定への対案として、前泊博盛沖縄国際大教授ら15人がまとめたものだ。
「抑止力神話」からの脱却を訴え、課題として、朝鮮半島の平和と非核化に向けた外交交渉の再開、中国への「敵視」政策の停止、「敵基地攻撃能力」を構成しうる兵器の購入や開発の中止、辺野古新基地建設と南西諸島への自衛隊基地建設の中止―など10項目を掲げた。
12月10日には伊勢崎賢治東京外国語大大学院教授が宮古島市で「琉球弧を平和の緩衝地帯に」と題して講演した。日本は武力衝突を防ぐクッションとなっている「緩衝国家」だと説き、国境に近い沖縄を「ボーダーランド」として非武装化すべきだと提案した。
11月28日には、新外交イニシアティブ(ND)が「戦争を回避せよ」と題した提言を発表した。相手の死活的利益を脅かさないと確認することで戦争の動機をなくす「安心供与」による安全保障と、そのための外交を主張した。
どの提言も実現は容易ではない。しかし「台湾有事」は絶対に起きてはならない。
これらの提言を、沖縄県が設置する「地域外交室」の取り組みにも生かしてほしい。辺野古新基地建設も「有事」の際の攻撃目標を新たに造ることにほかならない。新基地断念を求める国会請願署名の運動が34万人を目標に始まった。私たち一人一人が議論を深め、提言を民意にまで高め、具体的な外交、国内政策に結実させる実践が必要だ。