<社説>トルコ・シリア地震 対立止めて迅速な救援を


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 トルコ南部を震源とする大地震は、トルコと隣国シリアを合わせた死者数が9日までに1万5千人を超えた。6434人が亡くなった1995年の阪神大震災を上回る、甚大な被害となっている。

 現地は多くの建物が倒壊し余震が続く。被害の全容は見えておらず、雪が降る厳冬下にあることも救助作業を難しくしている。犠牲者の数はさらに増える可能性がある。一刻も早い救援が必要だ。
 内戦や民族対立が続く不安定な政治情勢が、状況をさらに深刻にしている。各国は政治対立を停止し、被災者に支援の手を届けることに力を合わせてほしい。
 6日午前4時17分(日本時間同10時17分)にマグニチュード(M)7.8の地震がトルコとシリアの国境地域を襲った。人々が就寝中の未明に発生したことが人的被害を大きくした。
 不明者の生存率が著しく下がるとされる「発生後72時間」が経過したが、倒壊した建物の下に残された人を救い出そうと、懸命の救助活動が続いている。
 行方不明者の捜索をはじめ、負傷者の医療措置、避難者の住居の確保、医薬品や食料、衣服などの生活物資の送達、インフラの復旧など、国際社会を挙げて支援を急がなければならない。
 日本政府も国際緊急援助隊・救助チームの派遣を決めた。沖縄を管轄する第11管区海上保安本部からも2人が参加している。がれきの山で余震が続いているだけに、救援隊も安全を十分に確保して活動に当たってほしい。
 70カ国がトルコに支援を申し出る一方で、欧米の経済制裁を科され、内戦状態にあるシリアへの支援は難航している。内戦下で複数の勢力が国土を分割し、それぞれの勢力を支える周辺国の立場が交錯するためだ。
 シリアのアサド政権は、欧米の経済制裁が支援を阻んでいると主張する。これに対し米国は支援物資を送っても反体制派地域に公平に分配される見通しはないとして、政権を通さず、民間団体などを支援する方向で調整する。アサド政権と友好関係を保つロシアや中国などは、政権を窓口に支援に乗り出す方針だ。
 シリアの内戦は10年以上続き、地震が起きたトルコとの国境地域は戦火を逃れた避難民が多く暮らしていた。不自由な避難生活の中で今回の大地震が襲った。人道の危機を招くことなく、全ての被災者に国際的な支援を行き渡らせなくてはいけない。
 災害支援を大国のパワーゲームに利用すべきではない。今はそれぞれの利害を棚上げして協調する時だ。
 トルコは1万7千人余りが死亡した1999年の北西部地震など大地震が相次ぎ、日本と同様に地震大国として知られる。決して遠い国の話ではない。建物の耐震強化、いつ起きるか分からない災害への備えも改めて徹底したい。