札幌市で開かれた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が閉幕した。気候変動対策が主要テーマだったが、日本は議長国としての役割を果たすことができなかった。重要なテーマであり、5月の広島サミットに向けて現状認識を改め、諸課題の解決に向けて指導力を示す必要がある。
気候・エネルギー・環境相会合は、生物多様性の保全強化や海洋汚染対策で一定の成果を上げたが、焦点だった温室効果ガスの削減に向けた石炭火力発電の早期停止には合意できずに幕を閉じた。
議長国である日本の消極姿勢が足を引っ張ったことが要因である。深刻な地球温暖化への責任を果たすべき先進国の姿勢ではない。
気候変動による海面上昇によって島嶼(とうしょ)国などでは国土が失われる危機に直面している。台風や洪水による被害を出している国々もある。大きな被害を受ける国は二酸化炭素(CO2)排出量が少なく貧しい。そういった国が温暖化のダメージを受けやすい。いわば先進国の経済成長のしわ寄せが途上国に大きく影響している構造的な問題だ。
温暖化による途上国への「損失と被害」への補償について、先進国などが拠出する初の支援基金の設置が昨年、ようやく合意に至った。地球規模の気候変動に対する危機感の表れだ。
問題解決のため、科学的にはこの先10年程度が「決定的に重要」とされる。気温上昇を1・5度に抑える「パリ協定」の目標を着実に実行に移さなければならない。今回も欧州などが脱炭素の目標時期の前倒しを迫った。
これに異を唱えたのが日本である。CO2排出量の多い石炭火力発電を維持する方針だからだ。政府は2050年の温室効果ガスの排出実質ゼロを宣言しているが、国内の取り組みは遅れている。
福島第1原発事故を受けた脱原発を実現し、風力や太陽光など再生可能エネルギーの拡大を目指すドイツと対照的である。ドイツは石炭火力発電を2030年に廃止すると時期も明示している。
脱炭素への強い求めは日本企業にもある。脱炭素社会を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」には大手を含む約200社が参加。「30年までに再エネ50%」と政府目標を約20年前倒しする提言をしている。政府は脱炭素への内向きな姿勢を改めるべきだ。
外相会合では「核兵器のない世界」への関与を確認した。広島サミットでは、岸田文雄首相の肝いりで核不使用の継続などを柱とする行動計画の具体化を目指す。
ロシアや中国への対応を確認する必要のあるサミットで、米国の「核の傘」に依拠する日本が指導力を発揮できるかは見通せない。サミットでの一致点を空手形で終わらせないためにも議長国としての役割が問われている。