<社説>シュワブ文化財 保護法に基づき徹底調査を


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 県教育委員会は、米軍キャンプ・シュワブ内の沿岸で発見された貝塚時代後期(約2千~800年前)の土器や石器など17点を、文化財に認定した。

 土器などが発見された現場は、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の埋め立て予定地となっている。今回、初めて海岸部の調査を実施したところ、9日間の表面調査で文化財を発見した。さらに見つかる可能性がある。この際、文化財保護法に基づき、シュワブ内を徹底調査すべきだ。
 私たちは70年前の沖縄戦で、尊い人命だけでなく多くの貴重な遺産を失った。戦後は「銃剣とブルドーザー」によって強制的に土地を取り上げられ、米軍基地が建設された。これまで米軍基地内に自治体が自由に立ち入れず、遺跡調査は十分行われていない。基地建設の過程で破壊された遺跡があるかもしれない。貴重な遺産が埋もれている可能性もある。
 名護市教育委員会は複数の文化財が見つかっている場所として、発見現場一帯を遺跡の「遺物散布地」に認定するよう県に求め、シュワブ内にある既存の遺跡との関連性を含めて調整を進めていく。
 文化財保護法によると、遺跡に認定された場合、その範囲の試掘が必要になる。遺跡とみられる痕跡や土器などが見つかると、本格調査を実施する。調査が完了するまで工事で地形を改変する行為は禁止されている。稲嶺進名護市長は「文化財保護法で示された手続きにのっとって進めていく」と述べた。
 一方、中谷元・防衛相は「関係法令に従い、適切に対応したい」と話している。関係法令の中に文化財保護法が入っているはずだ。調査が完了するまで移設作業を中止するのは「法治国家」(菅義偉官房長官)として当然の行為だ。米軍基地内であっても、国内法をしっかり適用するよう「毅然」(安倍晋三首相)とした態度で対応を望む。
 今回シュワブ内で発見された土器や石器と同じ場所で、2月に文化財の碇石(いかりいし)が見つかった。これまでキャンプ・シュワブ内で大又遺跡、思原遺跡など7カ所の遺跡群が見つかっている。今後も出土品や遺跡が発見される可能性は十分ある。
 私たちには先人の遺産を子や孫に伝えていく責任がある。その責務をしっかり果たしたい。
英文へ→Editorial: Thorough investigation into Cultural Properties at Camp Schwab under Protection Law