民意の曲解が横行している。政治家がこれを演出しているのなら、断じて許されない。
共同通信の全国電話世論調査で、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する政府の方針について「支持する」が47・8%と、「支持しない」の43・0%を上回った。
共同通信が昨年5月に行った世論調査では「移設作業を停止する」が49・6%と、「作業を進める」の37・2%を大きく上回っていた。逆転の背景には、宜野湾市長選で政府が支持した佐喜真淳氏の当選があろう。
だが佐喜真氏は選挙戦で、辺野古移設の賛否については徹底して言及を避けた。佐喜真氏が述べたのは「普天間の固定化は許されない」ということに尽きる。だから宜野湾市民が辺野古新基地建設を求めたと見るのは大きな誤解だ。
事実、琉球新報と毎日新聞、共同通信が合同で実施した投票所の出口調査では辺野古移設「反対」が56・0%と過半数を占めた。「賛成」は33・2%にすぎない。政府の辺野古移設方針を「支持しない」も54・9%と、「支持する」の33・8%を大きく上回っている。市民の意思は明確に辺野古移設反対だったのであり、佐喜真氏の発言に照らしても、辺野古移設の根拠とするのは間違っている。
こうした誤解が広がったのも政治家の言動が影響していよう。菅義偉官房長官は選挙後、「オール沖縄という形で沖縄の人が全て(辺野古移設に)反対のようだったが、言葉が実態と大きく懸け離れている」と述べた。さも移設賛成が多いかのような言いぶりだが、露骨な「民意のつまみ食い」である。
まして島尻安伊子沖縄担当相が「辺野古移設に反対する声に勝った」と述べたのは許されない。誤解の方向へ国民を意図的に誘導するかのような発言だ。
政治家は民意を尊重するのが仕事だ。誤解があるならそれを解くのが仕事のはずである。沖縄担当相ならなおさらだ。それが意図的に誤解へ誘導したのならもってのほかである。
佐喜真氏の発言を文字通り捉えたら、「危険性除去」、すなわち軍用機が市民の上空を飛ぶのをやめさせるべきだ。沖縄を縦横に飛ぶ軍用機多数を配備する新基地の建設が、それに該当するはずはない。政府は前知事と約束した「5年内の普天間運用停止」を米国に打診すらしていないが、まずはそれをするのが筋ではないか。