<社説>中城湾港物流拠点 21世紀の「万国津梁」実現を


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 琉球海運(那覇市、山城博美社長)が2017年度の完成を目指し、うるま市の中城湾港に県内最大規模の総合物流センターを整備することが分かった。県内の物流を支える基幹施設として、県経済への貢献が期待できる。

 琉球海運によると、総合物流センターは敷地面積約4万4千平方メートル、建築面積は約1万~1万5千平方メートルを予定している。
 海外展開を見据え、保税倉庫も想定する。迅速な配送や情報一元化による「ドアツードア」輸送、コストの軽減など、顧客から消費者まで多くの人に恩恵が見込まれる。
 世の中の動きを人間に例えた場合、人やモノ、金を血液、物流を血管と表現することがある。日本本土、沖縄、そして台湾を経て世界へと結ぶ航路を持つ琉球海運が総合物流センターを持つことで、沖縄を経由地とした世界を巡る大動脈の構築が見込まれる。
 これまで中城湾港地区は港湾整備こそ進んだものの、物流ルート確立をはじめ、那覇空港との距離から輸送コスト・時間が課題とされてきた。新たな総合物流センターは那覇港で陸揚げされた荷物を深夜に運び、24時間稼働や最新設備による処理の迅速化が図られるため「距離や時間はハンディにならない」(宮城茂琉球海運専務)とされる。
 残るは血管に血液を送り出すポンプ、要するに経済自立の鍵となるエンジンをどうするかだ。
 中城湾港地区は金型製造や機械装置、自動車製造業などが進出、県内のものづくり拠点となっている。無煙でダイオキシン排出が少ない小型焼却炉や、途上国向けに太陽光電池で医療機器を動かせる医療回診車を開発したメーカーなど、独自の技術を持つ企業がある。
 これらの技術を生かした製品の移・輸出拠点として機能すれば、産業集積地としての魅力も増し、さらなる企業誘致にもつながる。
 県のアジア経済戦略構想では「国際競争力ある物流拠点の形成」が柱の一つだ。構想は那覇空港周辺の自衛隊駐屯地や那覇軍港の返還・利用を想定したが、距離・時間的ハンディを克服する総合物流センターの誕生によって、中城湾港と那覇空港との新たな海空連携も考えられる。
 総合物流センターの誕生により、沖縄の地理的優位性を生かして日本、海外を結ぶ21世紀の「万国津梁」を実現してもらいたい。