<社説>参院選公示 基地、改憲が争点だ 将来見つめた1票投じたい


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 第24回参院選がきょう22日、公示される。

 安倍晋三首相が最大の争点とするアベノミクスの是非は、争点の一つにすぎない。沖縄選挙区では新基地建設問題、国政レベルでは改憲の是非こそが最大の争点だ。
 民意を無視して強行する辺野古新基地建設や、安保法制の成立過程でみられた強権的姿勢を持つ安倍政治に対する国民の評価を示す機会ともなる。
 民主主義の在り方と憲法の意義をどう考えるのか。そのことが有権者一人一人に厳しく問われる重要な選挙である。沖縄と日本の将来を見つめた1票を投じたい。

最善の選択示そう

 沖縄選挙区では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設について、県民がどう判断するかを注目したい。
 米軍属女性暴行殺人事件を受けて、事件の元凶ともいえる米軍基地の存在に対する県民の我慢は限界にきている。琉球新報社と沖縄テレビ放送が5月30日~6月1日に実施した世論調査では、辺野古移設に83・8%が反対した。多くの県民が危険を増幅させる新たな基地負担を拒絶しているのだ。
 安倍政権はそのことを重く受け止めるべきだが、事件後も「辺野古移設が唯一」の解決策と繰り返している。安倍政権のかたくなな姿勢を県民がどう受け止めているのかが選挙結果で示されよう。
 沖縄選挙区は、自民現職で沖縄担当相の島尻安伊子氏=公明推薦=と、無所属新人で元宜野湾市長の伊波洋一氏の事実上の一騎打ちとなることが確実である。
 島尻氏は琉球新報社が実施した座談会で「県外移設を撤回するのは苦渋の選択だったが、普天間の固定化を避けるということでやってきた」と述べ、辺野古移設を認める考えを示している。
 伊波氏は「(普天間問題の)解決は国外、県外への移転を通して閉鎖することだ。県内移設では負担軽減にならない」と述べ、新基地建設反対を打ち出している。
 辺野古移設だと普天間の危険性除去は10年以上かかる。一方で、県外移設も安倍政権が民意を一顧だにしない現状では、実現は不透明である。
 そのような状況の中、県民は最善の選択として、知事選や衆院選沖縄選挙区など一連の選挙で「新基地ノー」の意思を示している。
 参院選で同じ民意が示されるにせよ、変わるにせよ、いずれの結果が出たとしても、新基地建設問題に大きな影響を及ぼす可能性がある。有権者はそのことを深く考えた上で、沖縄の将来を見据えた最善の選択を示してほしい。

活発な政策論争を

 参院選の結果次第では、安倍政権は憲法改正に突き進む公算が大きい。
 改憲案の国会発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要で、自民、公明両党は衆院で既に3分の2以上の勢力を占めている。参院でも改憲勢力が3分の2以上となれば、安倍首相の宿願ともいわれる憲法改正が現実味を帯びてくる。
 安倍首相は21日の党首討論で「憲法改正草案の中で平和主義は貫いている」と述べた。だが、「新しい判断」で変更されることは十分あり得る。
 改憲の狙いが戦争放棄をうたった9条改正にあることは間違いない。曲がりなりにも日本が平和を保ち、平和国家として世界から評価されてきたのは平和憲法があったからこそである。「国のかたち」を大きく変容させることが、日本にとって本当にいいことなのか。慎重に考える必要がある。
 今参院選から「18歳選挙権」が国政で初めて適用される。各候補者、各政党は政策を分かりやすく訴え、活発な政策論争を繰り広げて有権者の関心を高めてほしい。
 有権者は沖縄にとって、日本の将来にとってふさわしいのはどの候補者、どの政党かをさまざまな角度から検討し、投票することで将来世代への責任を全うしたい。