<社説>自衛隊ヘリ投入 法的根拠が曖昧な暴挙だ


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 陸上自衛隊の輸送ヘリが米軍北部訓練場のヘリパッド建設の機材搬入に投入された。自衛隊法の具体的な根拠を示さず、県の反対を押し切る暴挙であり、直ちに自衛隊ヘリの運用を中止すべきだ。

 翁長雄志知事は民間ヘリが用いられた時点で、「事前に十分な説明もなく一方的に工事を進める政府の姿勢は到底容認できない」と強い抗議を表明していた。
 県は自衛隊ヘリの投入を沖縄防衛局に問い合わせていたが、実施時期や法的根拠についての説明もないまま自衛隊ヘリ投入を強行したのである。
 県内では2007年にも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の事前調査に海上自衛隊の掃海母艦が派遣された。その際、政府は法的根拠を示さないまま、「国家行政組織法」に基づく「官庁間協力」の曖昧な説明で押し切った。
 当時、久間章生防衛相は福島瑞穂社民党党首に対し、自衛隊の協力の事例として「さっぽろ雪まつりや遺骨収集」を挙げた。
 雪かきや遺骨収集などの民生協力ならともかく、米軍基地建設への協力も可能とするのは、違法な拡大解釈ではないか。
 武力を備える実力組織の自衛隊の活動は、自衛隊法など明確な根拠法令に基づいている。国家防衛の主たる任務ほかの活動については「民生協力」など限定列挙により、厳格に規定している。
 07年の海自掃海母艦派遣では、辺野古海域での新基地建設に向けた環境現況調査(事前調査)に海自潜水士が投入された。
 今回の自衛隊ヘリの投入は07年の事前調査とは異なり、米軍基地建設に直接関与するものだ。稲田朋美防衛相は「必要最小限に限る」としているが、程度問題では済まされない。防衛相は防衛省設置法4条19号を根拠に挙げるが、同省の米軍施設の提供を定める条項であり、自衛隊動員の文言はない。
 米軍基地建設に自衛隊が直接関与する自衛隊法等の根拠は何か。防衛相、政府は明らかにする責任がある。
 防衛局の「環境影響評価(アセスメント)検討図書」はヘリの輸送回数を「1日5回程度」、合計「20回程度」と記するが、これを上回る輸送回数となる見通しだ。
 騒音被害、貴重生物への影響が懸念されるヘリパッド建設にヘリを投入し、さらに被害が拡大する。県民無視の手段を選ばぬ建設強行は容認できない。