<社説>記者排除を正当化 報道の弾圧容認できない


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 日本の民主主義は危機に瀕(ひん)している。政府は東村高江のヘリパッド工事抗議行動の現場から、警察が新聞記者2人を拘束、排除したことについて、問題はなかったとする政府答弁書を閣議決定した。

 報道の自由、国民の知る権利の侵害を容認する閣議決定であり、強く抗議し、撤回を求める。
 本紙記者は市民の座り込み行動を取材中に、県警の腕章をした警察官、機動隊員に拘束され強制排除された。
 記者は琉球新報社の腕章を着け、警察官に本紙記者であることを訴え、近くにいた弁護士も本社の記者であることを指摘していた。
 県警は「記者とは分からなかった」と釈明したが、本紙掲載の写真で記者の腕章を確認できる。釈明が虚偽であることは明白だ。
 政府答弁書は「県警は責務達成のため業務を適切に行った」とする。しかし強制排除された記者や目撃した弁護士の聴取も行わず、写真や映像の分析などの説明もない。事実の検証や法的評価をなおざりに、県警の言い分を丸のみしたあまりに無責任な閣議決定だ。
 政府はヘリパッド工事のため他府県の機動隊を投入、反対行動の市民を強制排除し工事を強行している。答弁書に言う「県警の責務達成の業務」とは「ヘリパッド工事への協力」ではないか。
 ヘリパッド工事を巡っては、自衛隊法に明確な規定のない自衛隊ヘリの資材搬送、訓練場内の反対行動の市民に対するロープを用いた拘束、排除についても容認する答弁書が閣議決定されている。
 米軍基地建設の目的のため、警察法や自衛隊法を拡大解釈し、市民の安全や知る権利を無視する横暴がまかり通っている。
 安倍政権は特定秘密保護法の制定や、放送局に電波停止を命じる可能性があるとする放送法の恣意(しい)的な解釈など、国民の知る権利に対する制約を強めている。その延長上にあるのが、新聞記者排除を正当化した今回の閣議決定だ。
 今年4月に来日した国連人権理事会・特別報告者のデービッド・ケイ氏は、日本のメディアの独立が深刻な脅威に直面し、報道が萎縮していると指摘した。
 新聞社はさまざまな現場で取材し報道するのが使命だ。報道記者の強制排除は報道への弾圧にほかならない。それは正しい情報に基づき判断する民主主義をも損なう。不当な政府答弁書は容認できない。