安倍晋三首相とトランプ大統領の日米首脳会談で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設計画を「唯一の解決策」として推進することが確認された。世論調査などで県民の7~8割が反対する辺野古新基地建設だ。日米首脳が沖縄の頭越しに「唯一」と規定するのは許されない。
トランプ氏は選挙中、在日米軍撤退をちらつかせて日本に在日米軍駐留経費の負担増を求める発言をしてきた。日本側はトランプ氏がどんな要求を突き付けるか、身構えていた。
しかし今回、米側は駐留経費などの問題には触れなかった。一方で日本側が焦点としてきた中国が領有権を主張する尖閣諸島について、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認した。
首脳会談の共同声明として初めて、辺野古新基地建設が「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である」と明記した。
一方で、喫緊の課題である普天間飛行場の2019年2月まで(5年以内)の運用停止について日本側が要求することもなく、沖縄の基地負担軽減は議題にならなかった。安倍首相が沖縄の基地負担軽減を政権の課題とみなしていないことが分かる。
日米同盟を一層強化することでも一致し、米側は防衛面では日本側の要求をそのまま受け入れた形だ。
米側は経済面ではしっかり実を取った。象徴的なのは環太平洋経済連携協定(TPP)に代わる2国間の枠組み協議を確認したことだ。共同声明では「米国がTPPから離脱した点に留意し、最善の方法を探求する。日米で2国間の枠組みに関する議論を行う」とした。
安倍首相は国会などで米側にTPP離脱の翻意を促すと繰り返してきたが、実行しなかった。今後はトランプ氏の求める2国間の自由貿易協定(FTA)に向けた議論をせざるを得ない。
防衛面では日本に譲り、経済面では自らの主張を通す。経済人トランプ氏ならではの「ディール(取引)」外交といえよう。
しかし米国の経済政策と絡めて、ただでさえ米軍基地の過重負担にあえぐ沖縄に新たな基地を押し付ける日米の策が許されていいはずはない。辺野古の海は日米への貢ぎ物ではない。
英文へ→Editorial: Claim at U.S.-Japan summit meeting that “Henoko is the only solution” is unacceptable