選挙における政策論争を不当に軽んじる行為だ。民主主義を侮るものであり、断じて容認することはできない。
自民党本部の古屋圭司選挙対策委員長が、うるま市長選に立候補している山内末子氏の公約を「市民への詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術」と自身のフェイスブックで批判した。
「沖縄特有のいつもの戦術」と記していることから、山内氏のみを批判しているのではないことは明らかだ。政府・与党に対峙(たいじ)する沖縄の野党勢力のみならず、政府方針に異議を申し立てる県民全体に対する批判だと考えるべきだ。
言うまでもなく選挙は民主主義の根幹をなす制度である。候補者や政党が公約を掲げ、政策論争を交わすことで、代表者を選ぶ有権者に選択基準を示すのだ。それはあくまでも真摯(しんし)な論争であるべきであり、事実に基づかない侮蔑的な発言は厳に慎むべきである。
古屋氏のフェイスブックへの投稿はその枠を逸脱している。いかなる根拠をもって「詐欺行為」と断言するのか理解に苦しむ。記者団に問われた古屋氏は「客観的事実を申し上げた」と抗弁したが、何が事実なのか明言すべきだ。
「全く財源の裏付けのない無責任な公約」とも書いたが、古屋氏は市財政を把握した上で批判したのか疑問だ。
驚くべきことに竹下亘自民党国対委員長も古屋氏の批判に対し「そういう側面はあるのではないか」と同調した。沖縄側からすれば看過し難い言い掛かりだ。
沖縄に対する侮蔑(ぶべつ)は今選挙にとどまらない。例えば鶴保庸介沖縄担当相も11日の会見で「ポジショントーク(自身に都合の良い発言)をするような向きもないではないかもしれない」と述べ、辺野古新基地に反対する沖縄の動きををけん制した。
ここまでくれば、私たちは安倍政権と自民党中枢に「沖縄ヘイト」(憎悪)が充満していると疑わざるを得ない。辺野古新基地建設に反対する言論にはヘイトで対抗しようという意思が政権党にあるのならば、極めて差別的で危険な動きだ。
沖縄の与野党を問わず、古屋氏の批判には厳しく対処してほしい。選挙を通じて民意を表明してきた県民全体への侮蔑だからだ。自民党県連も投稿の撤回を古屋氏に迫るべきだ。