<社説>日米共同訓練 緊張高めず外交努力を


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 北朝鮮情勢が緊迫化する中、米海軍の原子力空母カール・ビンソンと海上自衛隊の共同訓練が23日からフィリピン海で始まった。核実験準備を進める北朝鮮をけん制するのが狙いだが、逆に過剰に刺激して緊張を高める恐れもある。米国や韓国、さらに北朝鮮に影響力を持つ中国とも連携し、外交圧力などを通して解決策を探る努力こそ必要だ。

 北朝鮮は16日に弾道ミサイル発射を強行し失敗するなど、軍事挑発を続けている。25日の朝鮮人民軍創建85年に合わせて6回目の核実験や弾道ミサイルの再発射に踏み切るとの観測もある。東アジアの安定を脅かす北朝鮮の暴走を、国際社会を挙げて阻止しなければならない。
 トランプ米政権は軍事攻撃を含む「全ての選択肢がテーブルの上にある」との方針で、カール・ビンソンを中心とする空母打撃群を朝鮮半島近海に向けて派遣した。日米共同訓練は米側から駆逐艦など3隻、海自側から護衛艦2隻が参加し、戦術運動の確認や通信訓練などを行う。共同訓練ではないが、21日には空母艦載機のFA18スーパーホーネットが着艦に失敗し海上に墜落する事故も起きた。
 ペンス米副大統領は18日の来日時に「平和は力によってのみ初めて達成される」と強硬姿勢を示した。戦争は常に「平和」や「防衛」を大義名分に引き起こされてきたことは歴史が証明している。武力だけに頼る硬直化した思考では、軍事力を誇示する応酬を繰り返し、一触即発の不測の事態を招きかねない。米軍基地が集中する沖縄にとっては標的となる危険度が増すことは何としても避けなければならない。
 安倍晋三首相は「北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、圧力をかけることが必要だ」と米政権の強硬方針を積極的に支持している。しかし、軍事衝突は誰も望んではいない。国民を不安に陥れないよう、政府は対話による平和的解決に向けて、あらゆる努力を重ねていくべきだ。
 米国は軍事圧力の一方、外交攻勢にも力を入れる動きも見せている。6カ国協議の日米韓首席代表会合を25日に開くほか、28日には国連安全保障理事会の閣僚級会合を予定する。北朝鮮の暴走を食い止めるには、こうした外交努力こそが大事だ。
 軍事行動で緊張をいたずらに高めてはいけない。