新基地工事で赤土対策が未設置 辺野古の海に濁り拡散、県条例違反の指摘も


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沖縄防衛局が埋め立てを進める名護市辺野古沿岸部。排水路や濁水処理装置が確認できない=5月10日(沖縄ドローンプロジェクト提供)

 米軍普天間飛行場移設に向けた名護市辺野古の新基地建設は軟弱地盤の存在で工事の長期化が予想される中、さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴う工事停止の影響が出てきている。関係者によると、既に完成しているはずの赤土対策のための設備が設置されていない。新基地建設に反対する市民からは濁りが拡散することに対する懸念や条例違反を指摘する声が上がっている。

 緊急事態宣言は解除され社会経済活動が再開しつつあるが、沖縄防衛局は工事再開を見合わせている。政府は「米軍とも意見交換することになる」(河野太郎防衛相)と述べており、在日基地で非常事態宣言を継続している米軍の事情が影響している可能性もある。

 防衛局は埋め立てている2区域のうち、2018年12月に土砂投入が始まった小さい方の区域について「陸地化が完了した」としている。だが埋め立てに伴う海の濁りを軽減させるための仮排水路と濁水処理設備(プラント)が完成していない。これらは埋め立てを始める際に県赤土等流出防止条例に基づいて通知していた対策だ。土砂投入で濁った水を濁水処理設備で薄め仮排水路を通じて海に放出する。

 防衛局はその整備を進めているところだったが、4月16日に従業員1人が新型コロナウイルスに感染したことが分かり、17日から工事を止めた。関係者によると、新型コロナウイルス感染症対策の影響で工事が止まっていなければ現時点で既に完成している予定だったという。土砂を投入しながら水路を造り始め、埋め立てが一定の高さに達した後に濁水処理プラントを設置する計画だった。工事が止まり「一部でまだ高さが足りない」というのが防衛局の説明だ。

 一方、防衛局の説明に対し、工事に反対する市民から疑問の声が上がっている。埋め立て区域に土壌の浸食や飛散を防ぐ薬剤がまかれており、埋め立てが一区切り付いた証しだと考えているためだ。

 土木技師の北上田毅氏は「一定の高さに達しているにもかかわらずプラントを設置していない。事業行為通知書の内容に抵触しており県赤土等流出防止条例に違反する」と指摘。「濁水処理プラントがない状態で、これから雨や台風による赤土拡散が心配だ」と述べている。市民の指摘を受けた県は防衛局に事実関係を問い合わせている。

 辺野古新基地建設は、軟弱地盤の影響で長期化が確定し、普天間飛行場の早期返還という大義が揺らいでいる。このまま工事を再開し建設遂行に突き進めばさらなる反発を招くとみられる。(明真南斗)