ロシアがウクライナに軍事侵攻してから24日で1年がたつ。沖縄戦体験者など関係者らは、武力で解決しようとする動きを非難し、被害を受けるウクライナの市民に思いを寄せた。また、昨今沖縄をとりまく軍備増強の動きにも懸念の声が上がっている。
国や指導者が始めた戦争の犠牲になるのはいつも民衆だ。ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長(63)は「これは時代が変わって近代化された戦いであっても、普遍的に変わらない戦争の本質だ」と指摘し、「ウクライナの人々が戦闘で負傷したり亡くなったりする痛ましい状況に心が痛くなる。1日も早い終息を祈っている」と話した。
また普天間館長はロシアのウクライナ侵攻により「軍備や抑止力が大事だ」という意見が一定の説得力を持って聞かれるようになったと見ており、「沖縄は突出して軍事要塞(ようさい)化の動きが進んでいる。事が起きれば再び戦場になる可能性がある」と懸念した。
ウクライナ侵攻を背景に、沖縄では「台湾有事」を想定した軍備増強が進み、日米の軍事演習は激化している。この動きに対し1月、「元全学徒の会」の声明を皮切りに平和ガイド団体などが相次いで声明を発表した。
元全学徒の会の声明を発起した同会幹事の宮城政三郎さん(94)は「台湾有事を防ぐという『抑止力』が軍拡を強化し、間違えば戦争を誘発する。軍拡によって戦争になった過去の歴史を繰り返してはならない」と力を込める。
宮城さんは与那国町出身。宮古・八重山諸島の自衛隊のミサイル配備にも懸念を強める。「首長らは住民を避難させることではなく、どうしたら戦争を回避できるか、町民が安心して暮らせるかを考えてほしい」と訴えた。
沖縄戦時、看護要員として従軍した翁長安子さん(93)は軍事侵攻を続けるロシアの動きに「人の命に対する無頓着さを感じる。とにかく戦をやめることだ。戦争は命を奪い築いてきた文化も破壊する」と憤る。
沖縄の軍備増強の動きについては「沖縄戦が始まる前と雰囲気は似ている。始まれば歯止めがきかない。私たちは目の黒いうちは戦争を絶対にさせないという思いだ。国民が関心を持って戦に反対しないといけない」と強調した。
(中村優希、中村万里子)