カメジロー「不屈」の精神、全国から支援 コロナ禍、資料館存続へ総額1000万円の寄付 不屈館開館10年


この記事を書いた人 アバター画像 瀬底 正志郎
外壁に彫られた「不屈」の文字を見つめる内村千尋館長=16日、那覇市若狭の不屈館

 日本復帰前の沖縄で、米統治の圧政に対する抵抗運動の先頭に立った政治家・瀬長亀次郎の足跡を展示する資料館「不屈館~瀬長亀次郎と民衆資料~」(沖縄県那覇市若狭)が3月1日で開館から10年を迎える。この3年は新型コロナウイルスの影響で来館者が激減し、一時は存続の危機にあった。しかし、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングを開始し、直接寄せられた寄付も合わせ、総額約1千万円の支援金が集まった。瀬長さんの言動に勇気を得た人々が全国にいることに意を強くした内村千尋館長(77)は、これからも「不屈」の精神を伝え続けていく決意を新たにしている。

 コロナ禍以前は、年間多い時は6600人を超える来館者がいた。しかし2021年は約1400人にまで減少。運営は友の会の会費やグッズ売り上げに頼る厳しい状況にあった。
 

全国から支援金と一緒に送られた手紙=22日、那覇市若狭の不屈館

 そこで20年6月、クラウドファンディングを開始。当初目標額の500万円をわずか1カ月で突破した。800万円に再設定すると同年10月までに全国941人から約930万円が寄せられた。

 中には現金を直接届けてくれる人もいた。内村館長は「感動するのは、必ず手紙が添えられていること」と寄せられた言葉の数々を大切に保管している。「不屈館をなくしてはいけない」「ずっと応援している」と温かい気持ちが集まっている。

 来館できなくてもグッズ購入で応援してもらえるよう、支援金の一部でネットショップも開設した。

 有事を理由に南西諸島の防衛力を強化する動きに内村館長は「戦争前夜を思わせる状況だ」と危機感を募らせる。ロシアとウクライナの戦争にも「戦争はこんなに簡単に始まってしまうのか」と心を痛める。

 瀬長さんの足跡に触れた多くの来館者が反戦を貫くことの大切さを受け止めてきた。その役割はより重みを増す昨今だ。「平和が一番、命どぅ宝」と言葉に力を込め、これからも市民とともに不屈の精神を貫く。

(金盛文香)