米有力軍事シンクタンクランド研究所は9月に公表した報告書で、中国のミサイル能力が急速に高まっていると指摘し「中国の近くに配置された米軍の固定基地は、防御を賄えなくなるだろう」と分析した。最前線にある対中主力基地の米空軍嘉手納飛行場がミサイル攻撃で機能停止する筋書きを示し、アラスカやグアムなど遠方からも戦闘機を運用する必要性に触れたほか、フィリピンやベトナムなどを挙げ「太平洋、東南アジアの国々で米軍が基地を利用する権利を拡大することが必要だ」と提言した。沖縄に集中する米軍の固定基地が「脆弱(ぜいじゃく)になった」(ジョセフ・ナイ元国防次官補)といった指摘が裏付けられ、沖縄の「地理的優位性」が乏しいことをあらためて示した。
報告書は1996年から2017年までの米中の軍事力を予測データを交えて比較した。太平洋の米軍基地に対する中国からのミサイル攻撃については、03年までは米側が「大きく優位」に立っていたが、10年には「ほぼ同位」となり、17年には「不利」に転じると評価している。
中国が1400発保有する短距離弾道ミサイルの射程距離内には沖縄も入っており、射的精度も「誤差5~10メートル程度」になったとした上で、嘉手納基地は「比較的少ない数のミサイル攻撃でも運用機能を数日間ほど停止されかねず、集中攻撃を受ければ数週間にわたって閉鎖を余儀なくされる」と指摘した。
報告書は台湾海峡へ無給油で飛べる地域に米軍は二つしか飛行場を有していないが、中国は台湾の半径800キロに39の飛行場を有していることを紹介した。その上で「うち一つである海兵隊普天間飛行場はインフラも限られ、任務の大部分は海兵隊の陸上部隊の支援を志向しており、制空権争いには限定的だ」と記しており、対中作戦で重要視される制空権争いでは十分な機能を果たせないとの評価を示した。
嘉手納がミサイル攻撃を受けた場合、沖縄で「追加的に使える滑走路」があれば、機能回復への日数を短縮できると記し、日米防衛協力の強化で米軍が自衛隊基地や日本の民間空港を使用すれば、補完機能に使えるとの分析も記した。一方、「中国のミサイル能力向上は今後も続き、これら施設での作戦も妨げられるだろう」としている。
こうした状況から報告書は遠方にバックアップ体制を築く必要を挙げ「米軍は高い脅威の環境下で、どう空軍作戦を展開するか創造的に考えなくてはならない」と指摘した。(島袋良太)