北京の琉球人埋葬地危機 調査・収骨なく開発計画 研究者ら保存運動


この記事を書いた人 Avatar photo 金城 潤
1879年「琉球処分」前後に中国へ亡命し、琉球救国を訴えた琉球人が眠る埋葬地=2015年12月15日、中国・北京市通州区張家湾鎮立禅庵村

 明治政府によって琉球王国が併合された1879年の「琉球処分」前後に救国を訴えて中国に亡命、北京で客死した琉球人が眠る埋葬地(現在はリンゴ畑)が、発掘調査や遺骨・遺品の収集・保存がなされないまま、開発される危機に直面している。埋葬地がある北京市通州区張家湾は、首都機能の一部移転や大型テーマパークの建設計画があり、2016年中には工事が始まるという。中国の琉中関係史研究者が発掘調査や遺骨・遺品の収集・保存に向けて動いているが、限られた時間の中で課題は多い。

 張家湾で数箇所確認されている琉球人埋葬地には、琉球からの進貢使、官生、救国を訴えた陳情使らが葬られているという。久米村出身の士族で親上雲(ぺーちん)の位を持つ王大業の墓碑も建っている。14人ほどの琉球人が眠るとされる張家湾鎮立禅庵村のリンゴ畑は、地元住民が住む長屋に囲まれ、昔からのたたずまいをうかがわせる。畑地なので、現状ならば発掘しやすいが、開発されれば困難とみられる。
 中国社会科学院近代史研究所の歩平所長、北京師範大の姜弘教授らが調査・保存に向けて取り組みを始めた。姜教授は「琉球と中国の約500年に及ぶ友好往来の歴史の証しとして、北京の琉球人墓の発掘、保存、復元に前向きに取り組んでいきたい」と話している。
 通州区では博物館を建設する計画があり、関係者は「開発前に調査したり、遺骨や遺品を発掘したりして、博物館に保管したい」と一層の取り組みの必要性を強調。予算の確保や具体的計画の策定は今後の課題だ。
 県内でも調査や遺骨・遺品の保管を求める動きが出始めた。沖縄国際大の友知政樹教授ら有志17人は12月14日、中国の研究者に嘆願書を提出した。友知教授は「中国と琉球(沖縄)のこれまでの友好交流の歴史を長きにわたり伝える証しとして、また未来のさらなる友好関係を示す礎として、発掘調査、保護、復元整備は大変重要だ」と話す。
 北京の琉球人埋葬地について長年、調査してきた又吉盛清沖縄大学客員教授は「琉球が一独立国として救国運動したことを証明する場であり、東アジアとの友好交流の証しでもある。価値ある場をつぶしてはいけない。沖縄県を通じて早期に公的調査をすべきだ」と話している。(新垣毅)
英文へ→Beijing’s Ryukyuan burial sites under threat of development