アカジン陸上養殖、石垣市が成功 研究所外では県内初


この記事を書いた人 志良堂 仁

 【石垣】石垣市は16日までに、県三大高級魚で知られるアカジン(スジアラ)の陸上養殖に研究所以外で県内で初めて成功した。水槽で稚魚から育成し約2年かけて出荷サイズの500グラム以上に成長させた。市は新たな養殖場の整備などを視野にスジアラ養殖事業の展開を構想している。

県三大高級魚としても知られるアカジン(スジアラ)(国立研究開発法人水産総合研究センター提供)
出荷サイズに成長したアカジン(スジアラ)。市水産課が研究所以外で初めて陸上養殖に成功した(同課提供)

 スジアラはハタ科、スジアラ属の魚で熱帯亜熱帯域に分布している。市水産課などによると、国内では1キロ2500~3500円、国外では1万~2万3千円で取引される高級魚だ。県内のほか、中華圏でも人気が高いという。
 市水産課はスジアラの種苗生産技術を確立している石垣市の西海区水産研究所亜熱帯研究センターから稚魚や養殖技術の提供を受け2013年12月から養殖試験を始めた。飼料は市内に生産拠点があるユーグレナ(ミドリムシ)を活用し効果を実証するなど2年間で160匹を出荷可能な大きさまで成長させた。
 同課の担当者は沖縄本島より水温が1~2度高い石垣島の環境が養殖に適しているとみており、種苗の供給元もある石垣市が産地になる可能性の高さに着目している。
 事業化に向けては、月産1~2トンのスジアラを生産できる1600平方メートルの専用養殖場施設建設を構想。西海区からの技術提供で養殖事業の確立を目指す。ただ市による予算化は未定で、参入事業者などを呼び掛けるなどして事業の確立を展望している。
 同課によると、県産魚類の価格は低下傾向だが、スジアラは高い需要で価格を維持している。担当者は「種苗生産技術は日本だけだが、スジアラは海外でも養殖事業化の動きが出ている。今回の試験で専門家でなくても養殖に成功した成果は大きい。東南アジアなどの需要も見込める市場性の高い魚で経済効果も期待できる。県内でブランド化を図ることができれば意義は大きい。石垣市の新たな産業になるよう取り組みを進めたい」と意気込みを語った。(謝花史哲)