本来なら率先して、機動隊員の差別発言を許されざるものだと意志表示すべき立場の大阪府知事が擁護するような物言いをした。許されることではない。ヘイトスピーチをあおるのは匿名多数の人だけではない。公人の責任が大きい。
これは個人の警察官の問題ではない。「琉球処分」以降、日本が連綿と抱えてきた、沖縄に対する蔑視、差別がたまたま一人の警察官の口から出たということだ。差別は地理的問題だけでなく、沖縄を差別してもいいと思っている人たちがいるということだ。
基地が沖縄に集中してもかまわない、むしろ沖縄だからいいんだと考える政治、日本社会がある。沖縄の「基地が多過ぎませんか?」という実にシンプルな問い掛けを、わがままだと思う日本社会がある。その意識が発言に結び付いた。
国会答弁を聞いていると、今回の発言を「不適切だった」で終わらせようとしていると感じる。不適切かどうかを議論しているのではない。この発言は歴史的経緯や文脈から明確に差別だということだ。行政のやるべきことは、きちんと非難し、二度と繰り返さないようにすることだ。6月施行のヘイトスピーチ対策法は、国や自治体、国民にヘイトスピーチをなくす努力を求める法律で、今回のような特定の発言を罰することはできない。しかし、市民の抗議活動に公務員である警察官が差別的発言をするのは法律以前の問題だ。(安田浩一、ジャーナリスト)