琉中学術交流は国内分断 公安調査庁、報告書に記述


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二

 公安調査庁が最新の報告書の中で、中国側の動きとして「『琉球独立』を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている。背後には、沖縄で中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられる」と分析していることが17日までに分かった。

公安調査庁の内外情勢の回顧と展望

 報告書「2017年 内外情勢の回顧と展望」で、中国が日本の「右傾化」への警戒を国際社会に呼び掛けていると指摘した。中国側は、在日米軍基地が集中する沖縄で「『琉球からの全基地撤去』を掲げる『琉球独立勢力』に接近したり、『琉球帰属未定論』を提起したりするなど、中国に有利な世論形成を図るような動き」を見せたと報告。コラムで、昨年8月に人民日報系の環球時報が「琉球の帰属は未定、琉球を沖縄と呼んではならない」とする論文を掲載したことを記している。2016年、北京で沖縄と中国の歴史研究者らが集まり「第2回琉球・沖縄最先端問題国際学術会議」が開かれた。「琉球独立勢力」は会議に参加した県内研究者を指すとみられる。

 公安調査庁は取材に「中国のシンクタンクなどが日本側の独立を標ぼうする団体と学術交流を進めていることや、沖縄を訪問していることから『接近』とした」と答えた。シンクタンクの詳細や沖縄訪問の回数、時期などについては「回答できない」とした。一連の報告について「中国政府の公式な表明ではない。主語を中国政府とは書いていない」とした。

 同庁は国内外のテロ組織や中国など各国情勢を分析する法務省の外局。報告書は16年度内に同庁のホームページで公開予定という。

◇識者「低次元すぎる」

 公安調査庁報告書に掲載されたコラムに対し、昨年5月に中国・北京で開かれた「第2回琉球・沖縄最先端問題国際学術会議」に参加した県内研究者らからは批判する声が相次いだ。

 学術会議を取りまとめた又吉盛清沖縄大客員教授は「独立は沖縄の人が選択する問題で中国がどうこうではない」と断言。「会議のメンバーは誰も公安調査庁に話を聞かれていない。公的機関が十分な調査もせず発表するとは、無責任そのものだ」と怒りを込めた。

 比屋根照夫琉球大名誉教授も会議の趣旨を「北京周辺の琉球人の足跡をたどること、近現代史や基地問題に関する報告、議論にあった」と説明。「議論の内容をきちんと見たとも思えず、程度が低すぎる」と批判し、「沖縄へのヘイトスピーチでは」と憤った。

 琉球民族独立総合研究学会の松島泰勝共同代表(龍谷大教授)は「中国の研究者の間にも、琉球が独立したら中国が侵略するという発想はない」と話し、独立が「中国に利する」との発想自体を否定した。

 権力とメディアについて研究する砂川浩慶立教大教授はコラムを「内容的に不適切だ」とした上で「沖縄の報道機関も共に、事実に基づいて反論してただしていくしかない」と指摘した。

英文へ→Public Security Intelligence Agency’s report claims Ryukyu-China programs aim to divide country