オスプレイ配備に対する抗議の意思表示として市民が米軍普天間飛行場周辺でたこや風船を揚げる行為に対し、政府は航空危険行為処罰法に違反する可能性があるとの答弁書を閣議決定した。
本末転倒ではないか。住宅が密集する飛行場に、事故率の高い「欠陥機」を飛ばして市民を危険にさらしながら、それに抗議する市民のたこ揚げが危険と言う。同飛行場を現状のまま放置することの方が格段に危険性が高い。
問題とすべきはオスプレイの強行配備と米軍普天間飛行場の存在そのものだ。
答弁書は、「航空の危険を生じさせた者」と判断した場合は「罪が成立しうる」としており、たこ揚げなどが同行為に当たるかの判断は示していない。違反に当たる可能性もあり得るとの認識を示している。
具体的な危険性も示し得ていない、この曖昧さは何なのか。住民運動を萎縮させるため答弁書を閣議決定したとしか映らない。答弁書にはオスプレイ強行配備を沖縄に押し付けようという政治的意図が透けて見える。
米軍が管理する普天間飛行場は、安全規定を定める日本の航空法の適用を受けない。米国内の米軍飛行場で滑走路の延長上に設けられているクリアゾーン(利用禁止区域)も、普天間飛行場には設置されていない。それどころか、クリアゾーン内には住宅がひしめき、学校、公共施設まである。
安全策を規定した航空法は適用されないのに、本来はテロ行為を取り締まることを主眼にした航空危険行為処罰法にたこ揚げなどが触れる可能性を示唆する。この甚だしい本末転倒は滑稽ですらある。
普天間飛行場は沖縄戦の時、米軍が集落や畑をつぶして勝手に造った。広大な土地を基地に取られ、住民はその周りに住まざるを得なかった。好きこのんでフェンス際にまで家を建てたのではない。
答弁書通りなら、同飛行場周辺では自分の屋敷内でもたこや風船を揚げる行為が法に触れる可能性がある。子どもの遊びが基地によって取り上げられるのは理不尽だ。ここは占領下の沖縄ではない。
たこや風船を揚げる行為を問題視する前に、米軍普天間飛行場を放置する方がはるかに危険と自覚すべきだ。オスプレイと共に沖縄から速やかに撤収してもらいたい。