魂に呼び掛ける歌三線 登川誠仁一年忌追悼公演


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 セイグヮーの魂に呼び掛ける歌三線。登川誠仁一年忌追悼公演(同実行委員会、琉球民謡登川流研究保存会主催)が3月29日、うるま市民芸術劇場響ホールであった。まな弟子の知名定男や徳原清文、時代を共に築いた津波恒徳らをはじめ、県内外で芸を継ぐ登川流の200人余が総出演。大工哲弘やよなは徹、大城美佐子、神谷幸一、饒辺愛子、山里ユキ、饒辺勝子、金城恵子、フォーシスターズらも出演し、座談会や琉球舞踊など幅広い演目で、亡き民謡の大家を悼んだ。

 登川流の会員らは「歌ぬ心」「新デンサー節」「油断しるな」などを斉唱。「流星」を歌った大島保克ら、ゲストも多彩に歌った。
 知名定男は「非常に緊張している。なぜ引退した人間がこんな所に出てこなきゃいかんのか」と切り出し、会場を笑いに包む。「師の一周忌。歌わずにはおれない心境です」と語り「スーキカンナー」を歌い出すと、拍手が湧く。11歳で入門し、登川夫妻と川の字で寝て、歌から人生までを教わった知名。味わい深い歌三線で、師の魂に呼び掛けた。
 座談会には知名、中江裕司、喜舎場盛勝、備瀬善勝、藤田正が登壇。映画「ナビィの恋」出演時の逸話などを披露した。三板に関しては、テンプラ鍋に投げ入れたりして音の質を追い求め、リズムを刻むだけでなく多様な演奏法を考案したことも紹介した。歌に戻ると伊禮正哲が歌う「センスル節」や照屋政雄による「戦後の嘆き」など、メドレーも聞かせた。田場盛信は軽快な三板を響かせた。最後は出演者が舞台にそろい、幕を下ろした。(宮城隆尋)

「トーガニ、しのんで歌います」と滋味ある歌声の津波恒徳
「12歳で師から手ほどきを受けた曲です」と語り、「スーキカンナー」を歌い始める知名定男
名曲「豊節」などを斉唱する、琉球民謡登川流研究保存会の約200人の会員ら=3月29日、うるま市民芸術劇場響ホール