<金口木舌>災害時だからこそ助け合いを


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 東日本に大規模な洪水や土砂災害を引き起こした台風19号の影響で、25日までに死亡が確認されたのは87人。60歳以上が7割を超えている。自宅で死亡した人も高齢者が目立ち、浸水した1階から見つかる事例が多かった

▼避難所まで介助してくれる人も一時的に受け入れる親戚もいなかったのかと想像すると胸が締め付けられる。自力での移動が難しい人は被害を受けやすい
▼糸満市で取材した避難訓練を思い出した。大規模地震・津波を想定し、住民が住宅街から県営団地まで避難した。高齢者の車いすを押してみたが歩道の段差に車輪を奪われ、うまく前へ進めない
▼団地に到着後、男性4人が車いすを持ち上げ4階まで階段を上る。汗だくになり息が上がっていた。災害に襲われたら高齢者や障がい者の避難はどうなるのか。考えると冷や汗が出た
▼市町村には高齢者らの避難を手助けする人の氏名や避難先を明記する「個別計画」の策定が求められる。防災は行政だけの役割ではない。地域の助け合いが要になる場合もある
▼車いすを利用する弁護士の東俊裕さんは「災害は年中行事」と警鐘を鳴らす。障がい者と健常者が学校で一緒に学ぶ環境があれば、移動が困難な人を前提にした発想が身に付くようになると説く。体が不自由になる可能性は誰にでもある。大切なのは自分事として考える習慣なのだろう。