<金口木舌>心のよりどころ


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 復旧工事の進む熊本城を6月に見学した。2016年の熊本地震で被害を受け天守閣の瓦が破損し落下した。震災から3年を経ても城内の各所で建物は傾いたままで、崩れた石垣の石は地面に積まれていた。被害の大きさを感じた

▼案内してくれたのは熊本日日新聞社の記者。復旧の過程を追い続けている。記者は熊本市出身。七五三は天守閣を背景に撮影、初デートも熊本城だったと瞳を潤ませ思い出を聞かせてくれた。熊本の人にとって「心のよりどころ」だと感じた
▼首里城で火災が発生し、正殿など7棟が焼失した。正殿が崩れ落ちる映像に、言葉を失った人は多いだろう。首里城は沖縄戦で壊滅したが、80年代から30年余りかけて復元作業が続いてきた
▼正殿は1992年に復元され同年11月2日に首里城公園が開所した。復元過程は全国に報道された。翌年にはNHK大河ドラマ「琉球の風」が放送され、琉球の歴史・文化の再評価につながった
▼本土で暮らす県出身者の中には、沖縄差別を経験した人も少なくない。首里城復元は差別をはねのける原動力になり、ウチナーンチュとしての意識を形成するきっかけになった
▼高台にある首里城は日常の風景だったが、失って初めて存在の大きさに気づいた。熊本城でも首里城復興支援の募金箱設置が始まった。喪失感はすぐに消えないが、温かい支援は再建に向けた希望になる。