<金口木舌> 現代の「防空の心得」


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 幾人かの沖縄戦体験者を訪ねる中で何度か聞かされた歌だ。空襲警報のサイレンが鳴ったときの心得を教えるもので、学校や幼稚園で習ったという。体験者は懐かしそうに口ずさんでくれた

▼歌詞はこう。「空襲警報聞こえてきたら 今は僕たち小さいから 大人の言うことよく聞いて 慌てないで 騒がないで 落ち着いて 入っていましょう 防空壕」。題名は「防空壕の歌」という
▼空襲が迫ったときの行動もある。「親指で耳をふさぎ、残りの指で目を覆う。くぼ地に入って伏せる」。心臓を守るため、左足を折り曲げ、膝で胸を押さえるよう教えられたという人もいる
▼「音聞いて 止まって 黙視 怖いと思ったら逃げましょう」。戦時中ではなく、今日の普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校での指導だ。米軍機に対する現代版・防空の心得を必要とする学校が日本国内にどれほどあるだろうか
▼校内でおびえることなく、児童に明るく過ごしてほしい。それでも米軍機事故から身を守るすべを教えねばならない。教師は引き裂かれるような思いであろう。保護者も同じ心境ではないか
▼本当の空襲が襲った日、子どもたちは「防空壕の歌」を歌う余裕などなかった。だからこそ、悲劇の前に現代の防空の心得をなくしたい。学校の移設や新基地建設で済む話ではない。米軍機の飛行を直ちに止めるしかないのだ。