<金口木舌>鳥なき里のコウモリ


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 「東京地検がすった転んだって、おれがそんなこと知るかい」「そんなことを聞きたいんだったら、事前におれに申し込みの書面でも持ってこいよ」。激高して記者を指さし、何度もマイクを押しのける男性。「おまえ、場所を考えて言え」などと語気を荒らげる

▼発言の主は反社会勢力などではない。政権与党である自民党の二階俊博幹事長だ。テレビ局のネットニュースの映像がSNSで拡散され、批判にさらされている
▼台風19号の被災地・栃木県を20日に視察した際、取材に答えた。記者から統合型リゾート施設(IR)に関する疑惑で東京地検特捜部の捜査を受けた秋元司衆院議員について質問された途端、怒りをぶちまけた
▼秋元氏は25日に収賄容疑で逮捕された。自民党の国会議員が捜査を受けたことについて、自民党幹事長に質問することの何が間違っているというのか
▼「鳥なき里のコウモリ」ということわざがある。鳥のいない場所では空を飛べるというだけでコウモリが鳥のように振る舞う。優れた者のいない場所でわが物顔で威張り散らす権力者を表す際にも用いられる
▼閣僚では麻生太郎副総理兼財務相がいる。記者の質問の言葉尻を捉え、問い詰める場面がネットのニュースで流れていた。なぜ丁寧な受け答えができないのだろうか。「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」ということわざもある。