<金口木舌>寝正月の番人


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 仏米の人気映画シリーズ「トランスポーター」では、運び屋の主人公がカーアクションとともに困難な輸送に挑む。トラブル防止のため契約厳守、依頼者名を聞かない、依頼品を開けない―の3ルールを主人公は自らに課す

▼会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告も映画さながらの出国劇を見せた。元米軍特殊部隊のプロが楽器の箱に隠し連れ出したとみられる
▼レバノンで会見し、陰謀論を主張した。日本の報道機関の参加を拒むなど、メディアを選別する姿勢には共感できない。ただ、長期勾留など「人質司法」と批判される日本の刑事司法制度に一石を投じたのは確かだ
▼先月21日、米軍北部訓練場に正当な理由なく侵入したとして刑事特別法違反の疑いで6人が逮捕された。請求から原則5日以内に開く勾留理由開示の法廷を、那覇地裁は当初、仕事始めの1月6日に開く方針だった。法の番人は正月休みが欲しかったのか
▼弁護人の批判の声が報じられた後、一転して6人は12月30日に釈放された。沖縄弁護士会も地裁に「違憲・違法が強く疑われる」と抗議した
▼戦前は逮捕・勾留が恣意(しい)的に運用された。その反省から憲法34条は、要求があれば直ちに勾留理由を開示するとうたう。番人が自らの憲法を軽んじ、寝正月を決め込むようではトラブルを防げない。