<金口木舌>球春到来


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 植物に生気がこもり、芽が出る季節。春の字義には冬の間、土に閉じ込められた草が日の光を受けて芽吹くとの意味があるという。「はる」の読みの由来には「草木が張る」「天気の晴る」などが考えられるそうだ

▼沖縄歳時記で春の章を開くと「一期田植う」が目に飛び込んできた。石垣島の早場米などはそろそろ植え付けの頃。「春北斗」はこの時期、高い空にある北斗七星。「春天」の星の光はどこか柔らかい
▼鳥たちは渡りに子育てと忙しい。「つばくらめ」も春の季語。雲間に消えていく鳥の群れの「鳥雲に入る」はカモメなどの渡りだろうか。本州の森で食物連鎖の頂点に立つイヌワシは卵を抱く時期
▼歳時記には「球春」も載っている。プロ野球がキャンプインした。自主トレで自分と闘い体をつくってきた選手たち。今度はチームメートとの争いだ。実力伯仲の戦いを表す熟語に「竜闘虎争」がある。熱く激しいレギュラー争いになるだろう
▼今年は東京五輪が控える。野球の日本代表には金メダルへの大きな期待も懸かる。代表候補に挙がってくる選手にとっては、夏の大舞台も意識したキャンプインだ
▼県内では7球団が一斉始動した。2次キャンプ、オープン戦を含めると9球団が集う。トップ選手のプレーを間近で見られる。風光る季節。球場でのどかに吹く風を感じるのもこの季節の楽しみだ。